F1好きのMくんが、列車内で予約作業を進めている時に、

「こうなったら、今日からモナコに行きませんか？」

　と提案してくれたのだ。

　もともとは日本対イングランド戦の翌日、すべての〆切が終えてから、モナコに行こうとふたりで話し合っていた。ニースからモナコまでは各駅停車で14分ほど。感覚としては、井の頭線各駅停車で渋谷から永福町に行くような感じだ。

　土曜の朝、われわれはモナコの街を散策に出かけた。

　ああ、なんとモナコ・グランプリのホームストレートまで歩いて10分ほどで行けてしまうではないか！

　週末の朝は、まだ街は眠っていた。なんとなんと、スターティンググリッドの数字が公道に記されている。2番グリッドには薄い緑のプジョーが停車していた。そして「モナコ・マイスター」、アイルトン・セナのことを思い出し、胸の中で祈る。

　マルセイユの地べたの二人は、モナコで自尊心を回復したのだった。

＜《現地の物価高》編から続く＞

#3に続く

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