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「うわっ、やられた…」ラグビーW杯、フランス現地記者ヤバい宿泊トラブル《オーナーが突然バックれ、11万円返金不可かも》列車も1時間遅れで…
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/09/19 17:37
9月17日のイングランド戦で。現地取材班の宿泊トラブルはその2日前に起こった
あまりにもお腹が空いたので、高いだろうが駅構内でなにかを食べることにする。不思議とジャンクなものが欲しくなり、Carl’s Jrでダブルチーズバーガーをオーダーした。注文はタッチ式のパネルで行い、受取を対面で行うタイプの店舗で、ものの数分で出来上がってきた。
しかし店内には座るところがなく、駅構内のベンチも遅延のせいか大混雑で、ひと席も空いていない。仕方なくふたりで地べたに座ってハンバーガーを食べることにした。
パテがうまかった。
それでも、なんだか自尊心が削られていく気がした。
信頼が不可欠の経済行為を一方的に破棄され、路頭に迷う寸前だった。
そしてフランスでは定番の遅延による精神へのダメージ。
加えて56歳にして、地べたでハンバーガーを食らうという行為の情けなさ――。
私が好きな浪曲師に、玉川太福がいる。彼の新作浪曲に「地べたの二人」というものがある。労働者のふたりの日常、たとえば弁当の「おかず交換」といった風景を浪曲にした作品集だ。
まさに、Mくんと私は、マルセイユで「地べたの二人」になったのだった。
モナコの美しい街に救われた
ニース行きの列車は15時08分、ちょうど100分遅れでマルセイユを出発した。ニースに到着したのは18時前、駅前で食事をし、そこからまた電車を乗り継ぎ、急遽抑えたアパートメントホテルに投宿したのは20時だった。ちょうど、トゥールーズを出てから12時間が経過していた。
そしていま、私はモナコにいる。