無欲で臨んだ羽田盃の衝撃「すごい弾け方でした」

　このレースのパドックで、御神本は初めてミックファイアに跨った。渡邉調教師とはどんなやり取りがあったのか。

「ちょっとチャカチャカしてうるさいところがある、と言われました。あとは、東京ダービーに向けて、いい競馬をしてほしい、と。ダービーの出走権がほしくて羽田盃を使ったみたいです（上位5頭に優先出走権）。レース運びに関する指示は一切ありませんでした。自分としては、スムーズな競馬をして、先行できればいいけど、あまり余計なことはしないでおこう、という感じでした」

　同馬は昨年12月の3戦目を終えたあと裂蹄になり、陣営はそのケアも行っていた。

「爪への負担を考慮して、去年の暮れぐらいから坂路のある外厩のミッドウェイファームで調整されていたんです。休み明けで、ダービーの権利や爪のこともあったので、この一戦にすべてを懸ける、という感じではなかったですね」

ミックファイアとの初コンタクトは羽田盃のパドックだったという　©Number Web

　御神本はそう話したが、力が違った。道中2番手につけたミックファイアは3、4コーナー中間で先頭に立ち、直線に入ると独走。2着のヒーローコールを6馬身突き放した。

「追い出したら、すごい弾け方でした。これは楽勝だと思い、あまり追わずにゴールしました。南関東のクラシックは消耗戦のようなところがあって、本番まで何戦もして、耐えて強くなった馬が生き残る、というパターンが多いんです。そんななか、3回しか使われてない馬が無敗で一冠目を獲るというのは、あまり考えられなかった。衝撃でしたね」

　彼が言うように、2着のヒーローコールも、3着のサベージも、これが10戦目だった。

羽田盃を6馬身差で圧勝したミックファイアと御神本訓史　写真提供：TCK（東京シティ競馬）

御神本訓史にとって“鬼門”だった東京ダービー

　一躍クラシックの主役となったミックファイアの次走は6月7日の東京ダービー。御神本にとって14回目の東京ダービーだったが、過去1回も勝ったことがなかった。

「これまでにも結構チャンスはもらっていて、羽田盃をチギってダービーで1番人気になって飛んだことも何回かあったんですよ。そういう悪いイメージが自分のなかにあったのは確かです」

　羽田盃の勝ち馬で初めて東京ダービーに臨んだのは2007年のトップザバトン（羽田盃は石崎駿騎乗）で、8着。2013年は、自身の手綱で羽田盃を4馬身差で勝ったアウトジェネラルで圧倒的1番人気の支持を得るも、6着。さらに2019年も羽田盃を5馬身差で制したミューチャリーで1番人気に支持されながら、2着。そして昨年は、羽田盃3着のシャルフジンで1番人気となり、8着に敗れている。

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