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WBC後にまさかの不調…牧秀悟25歳を救った大和“師匠”の一言「“緊張感”の部分で違和感があった」「大和さん、WBCを見ていて…」<8月・月間MVP>
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNanae Suzuki
posted2023/09/11 11:01
1年目から活躍を続け、WBC日本代表にも選ばれた牧秀悟が直面した、開幕からのまさかの不調。どのようにして復活を遂げたのか、話を聞いた
持つべきものは師匠である。引き付け、タイミング、間合いという言葉を聞いて思い出したのが、8月30日の阪神戦(甲子園)だ。6回表ランナー1、3塁の場面、牧は大竹耕太郎の投じた低めのストレートを鋭いスイングで弾き返し、右中間の深いところへ3ランホームランを放ったのだが、そのタイミングやラインドライブが掛かった弾道など、これまで見てきた牧の本塁打とは趣が異なり目を見張った。そう伝えると、牧も頷いた。
「あれは自分でも驚きましたね。あんな強い打球を広い甲子園の右中間に打てたっていうのは、自分にとっても新しい発見でしたし、自信にもなりました」
プロ3年目、牧にはまだまだ伸びしろが残されているようだ。
3年間で一番落ち込んでいた…初めて経験した空気
さて今季、DeNAは交流戦で初優勝するなど前半戦はリーグ優勝争いに絡んでいたが、7月に入ると投打ともに低調になり、後退を余儀なくされた。苦しい時間がつづく中、チームの中心である牧にはどんな光景が見えていたのだろうか。
「なかなか思うように行かない時間が過ぎていきました。自分も四番として点が欲しいときに打てなかったり、チームに迷惑をかけてしまい……。選手たちも試合前は決して雰囲気は悪くないんですけど、ゲーム中、点差が離れていくと、雰囲気が重くなっていたような気がしました。自分が入団してからの3年間で一番落ち込んでいたじゃないですけど、初めて経験した空気でしたね」
キャプテン佐野への申し訳なさ
苦しかったが、それ以上に牧は、信頼を寄せているキャプテンの佐野恵太の様子が気になった。
「この3年間、ひたすらヒットを打ちつづけている佐野さんを見てきたので、本当こんなに苦しんでいる姿を見るのは初めてでした。ただキャプテンとして打っても打たなくても、変わることなくチームメイトと接してくれていたと思います。とはいえ、ふとキャプテンとして責任を感じているんじゃないかっていう様子を何回か見ました。もうちょっと自分が打つことで助けることができれば……」
助けられた妻からの言葉
四番の責任。心身ともに疲弊した7月だったが、そんな牧をメンタルから支えてくれたのが家族の存在だ。