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WBC後にまさかの不調…牧秀悟25歳を救った大和“師匠”の一言「“緊張感”の部分で違和感があった」「大和さん、WBCを見ていて…」<8月・月間MVP>
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNanae Suzuki
posted2023/09/11 11:01
1年目から活躍を続け、WBC日本代表にも選ばれた牧秀悟が直面した、開幕からのまさかの不調。どのようにして復活を遂げたのか、話を聞いた
「アメリカから帰ってきてチームに合流したときは気づかなかったのですが、開幕してゲームに入ると、これまで経験してきたような緊張感がまったくなくて、すごく変な感じだったんです。もしかしたらですけど、WBCでこれまで経験をしたことのない雰囲気を味わったことで、スイッチが上手く入らなかったのかもしれません」
牧はいろんな人に意見を求めた
あの日本中を熱狂させたWBCでの激闘の日々。牧にとっては未曽有の体験だったことは想像に難くなく、それを経たことで感性の部分でピークアウトしていた可能性は高い。
上がらない調子。牧がこの状況を打開するために実践したのは“聞く耳を持つ”ことだった。
「調子が悪い時期、田代(富雄)コーチや大和さん、宮﨑(敏郎)さんなど、いろんな人に意見を求めるようにしたんです。今年は特に周りのアドバイスをたくさん受け入れて、悪い時期を乗り越えられるようにって」
この素直で謙虚な姿勢。牧ほどの選手であれば自分の中に確固たるスタンスがあるものだが、苦しいときこそ意固地にならず、柔軟に人からの意見を取り入れる。好不調の波があるにせよ、この姿勢が結果を出しつづけることのできる要因なのだろう。
大和からのアドバイス
とくにアドバイスで牧に刺さったのは、“師匠”と仰ぐ大和の言葉だった。
「春先に大和さんと食事に行ったとき『どんな感じになっていますかね?』って訊いたんです。そしたら大和さん、WBCを見ていてくれて『いつもより大きく振っている。前で振りすぎている』って、教えてくれたんです。なるほどなって。WBCでは周りの人を見ながらバッティング練習をしていたんですが、そこは自分では気づいていませんでした」
侍ジャパンでは大谷翔平や吉田正尚、村上宗隆、岡本和真といった球界屈指の強打者に囲まれ、知らず知らずのうちにスイングが前に掛かり、大きくなっていたのかもしれない。
今までの牧とは異なる一打
「それを聞いて、ボールをもっと引き付けるように修正することができ、徐々にですが自分のバッティングを取り戻せたというのはありますね。あとはタイミングが合っていない時期に『間合いをしっかり作れるように』って大和さんに指摘してもらって、それが今は生きていると思います」