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「情けないのう…呆れるよなあ」ヤクルトの死球問題に阪神・岡田彰布監督が激怒するワケ “内角攻め”の伝統は野村克也監督の教えにあり?
posted2023/09/08 17:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
SANKEI SHIMBUN
ヤクルトの死球禍が問題となっている。
9月3日のヤクルト対阪神戦。7対0と阪神が大量リードした9回にヤクルトの左腕・山本大貴投手の投じた1球が阪神・近本光司外野手の右脇腹を直撃。その場にうずくまった近本は、代走を送られて途中交代した。
近本は7月2日にも巨人・高梨雄平投手から死球を受けて右肋骨を骨折し戦線離脱という“事件”があっただけに、神宮球場の阪神ファンからは悲鳴にも似たどよめきが湧き上がる事態となった。翌日の精密検査の結果、骨折などはなく、何とか長期離脱という最悪の事態は避けられたことが不幸中の幸だったと言えるだろう。
岡田監督「情けないのう。呆れるよなあ」
しかしこの死球を巡って阪神・岡田彰布監督の怒りは収まらない。
8月13日には同じヤクルト戦で梅野隆太郎捕手が今野龍太投手から死球を受けて左尺骨を骨折し、今季絶望となっている。
それだけに試合後にはホームベース付近まで出てきてヤクルトベンチを覗き込んで文句を言いたそうな仕草を見せたが、ヤクルト・高津臣吾監督はメディア対応のためにベンチには不在だった。
「情けないのう。2年連続優勝したチームやしのう。呆れるよなあ。おらんかったよ、高津、ベンチに。探したけど」と語った岡田監督。「状況(7点差の9回)を考えたらって、もう……。普通に考えたら分かるやないか。そういうチームなんやろ」と大差のゲームの終盤でここまで投手に厳しい内角攻めを要求するチームの“教育”に対して、厳しい言葉を向けたのである。
阪神戦ばかりではない。9月6日現在で今季のヤクルトの死球59は12球団最多。8月19日には中日・石川昂弥内野手への頭部死球などもあり、その厳しい内角攻めに対して批判の声が上がっているのは事実である。
もちろん昭和の時代ならまだしも、いまのプロ野球で故意にぶつけるなどということはない。ただ、ヤクルトにこれだけ死球が多い理由を読み解く1つのヒントは、近本への死球後に高津監督が謝罪した言葉の中に隠されているのである。
「シュートで内角攻め」は“野村監督の教え”
阪神戦後の囲み取材で高津監督は「申し訳なかった」とぶつけてしまったことを謝り、こう語っている。