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《142億円で強奪》「金の亡者。裏切り者」「信頼関係にヒビ」批判殺到の欧州王者イタリア→サウジ電撃移籍…大モメ監督人事の真相
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byChristopher Lee - UEFA/Getty Images
posted2023/09/16 17:00
23年6月、UEFAネーションズリーグでのマンチーニ監督。まさかこの時、イタリアからサウジ代表に鞍替えすると想像した人は少ないだろう
彼は「私が辞めても次の代表戦まで25日(※実際は27日)もある。3日じゃない」と開き直ったが、緊急を要する後任監督探しや代表スタッフ等の周辺整備、何よりプレーする当の選手たちへの心理的影響等にマンチーニは無頓着すぎた。
『コリエレ・デッロ・スポルト』紙は、サウジアラビア連盟が仲介人を通じてマンチーニへオファーした2度の時機を特定しスクープした。1度目がカタールW杯の開催されていた昨年12月、そして、2度目はUEFAネイションズリーグ決勝プレーオフの行われた今年6月だ。「辞任の決断にサウジアラビアはまったく関係がない」というマンチーニの論拠は崩れた。
信頼関係にもいつしかヒビが入り、札束が
どんなに素晴らしいチームにも“賞味期限”がある。マンチーニのイタリア代表はカタールW杯を逃した時点で終焉を迎えるべきだった。あれほど蜜月にあった代表監督と連盟との信頼関係にもいつしかヒビが入り、そこにサウジアラビアが札束を詰め込んで両者は分断してしまった。後味の悪さが残る。
首都リヤドでの就任式当日、現役時代からマンチーニを長く取材してきたベテラン記者たちの記事が各紙に掲載された。大事な何かを裏切った戦友をむしろ憐れむような、別れの文が綴られていた。
今回の辞任騒動は、EURO2024予選を戦っている現欧州王者からの実質的な代表監督引き抜きであり、常識も作法もモノともしないサウジアラビアの強引な手法に西欧世界は衝撃を受けている。
マンチーニは発つ跡を濁しながら母国イタリアを去り、アジア大陸に乗り込んだ。
残されたアッズーリには、後任として急遽、前ナポリ監督ルチアーノ・スパレッティが招聘された。しかし、新監督誕生の経緯でも金銭面で一悶着が起きている。
〈第2回に続く〉