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バスケ躍進の“重要人物”ホーキンソンの激動人生…155キロ投げた野球を断念、ホームシックに「まずいな…」父が語る“日本国籍を取得する”まで
text by
和田隆文Takafumi Wada
photograph byTakashi Aoyama/Getty Images
posted2023/09/05 11:01
バスケ躍進の“重要人物”ホーキンソンのルーツを父が明かした
「ホームシックになっていた」
2017年夏に台北で行われた世界ユニバーシティー大会で米国チームの仕事を終えた後、名古屋に立ち寄った。来日して間もないジョシュのアパートに足を踏み入れると、すぐに異変を感じたという。米国から持ってきた荷物の二つが、解かれずに放置されていた。
「これはまずいな、と思わずつぶやいたよ。聖なるクーガー・フラッグ(ワシントン州立大の旗)も広げず、箱に入ったままだったから。ホームシックになっていたんだろう」
ネルズさんはアパートから10キロ以内にあるゴルフ練習場をネットで検索し、ジョシュを打ちっぱなしに連れ出した。「何をしてもいいから週に2度は外出しなきゃだめだ」と諭し、個人ガイドを雇って名古屋城見学にも行った。息子の心は徐々にほぐれた。
日本語を猛勉強の日々
あれから、6年。Bリーグで結果を残し、1部の信州、渋谷と渡り歩いた。代表入りを目指して日本国籍を取得するという決断が本気だったとネルズさんが知ったのは、2022年の夏のある日だった。娘の結婚式で2人きりになると、ジョシュから買い物に誘われた。
「ホワイトボードと消せるフェルトペンを買うためにストアへ行った。(帰化申請の)テストをクリアするために日本語の練習をしなくてはならないと言うんだ。そのレベルまで進んでいるとは思っていなかった。覚える日本語の一覧を見せられたときは、たまげたよ」
背番号「24」が特別な理由
姓からHawk(ホーク=鷹)を取って日本名を「鷹大(たかひろ)」にしたとジョシュから聞いたとき、ネルズさんは「いけてる」と感じたという。「24の小さな模様がある」とナンシーさんから耳打ちされ、鷹が24画だと知ると「それはすばらしい」とつぶやいた。
ジョシュにとって「24」は特別な数字であり続けた。幼少期からこの番号を背負い、そして日本代表でも。そのわけをネルズさんが教えてくれた。「私の妻が大学時代につけていた番号なんだ。彼女の方が私よりいい選手だったからかな」と言って、にやりと笑った。