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バスケ躍進の“重要人物”ホーキンソンの激動人生…155キロ投げた野球を断念、ホームシックに「まずいな…」父が語る“日本国籍を取得する”まで
posted2023/09/05 11:01
text by
和田隆文Takafumi Wada
photograph by
Takashi Aoyama/Getty Images
ジョシュ・ホーキンソンは約束の時間に遅れない。17歳の高校生だったある日曜日、教会へ行き、食事をして用事を済ませた後、午後6時に家族会議を予定していたのに珍しく時間になっても姿を見せなかった。家の中を探してもいない。両親が心配して自宅の外を見てみると、野球のボールを投げながら空を見上げて泣いていた。
「野球は辞めるよ」
「バスケより野球がうまかった」
秋にサッカー、冬はバスケットボール、春には野球。ジョシュは「三刀流」の少年だった。父のネルズさんはノルウェー、母ナンシーさんはデンマークでプレーしたバスケットの元プロ選手。だからこそ、息子の才能が分かった。ネルズさんは高校時代を思い返して言う。
「バスケットより野球の方がうまかった。親として、見ているだけで分かる。6フィート10インチ(208センチ)の長身から155キロのボールを投げ下ろしていた。ワイルドじゃないランディ・ジョンソンだったよ」
米ワシントン州シアトル近郊のショアウッド高では上級生にブレーク・スネルがいた。のちに大リーグでサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)に輝くスター左腕が先発し、右腕のジョシュが救援したこともあった。スネルを視察しに来た大リーグのスカウトやゼネラルマネジャー(GM)が「あれは誰だ。あのすごいノッポは」と驚く姿をネルズさんは覚えている。
野球断念→バスケで大学進学
そんなときに右の腕を痛めた。ネルズさんは多くを語らなかったが、ボールの直撃を受けた部位が悪く、一時は利き腕が使えなくなったほどだった。そのさなかに出場したバスケットのトーナメント大会では、フリースローを含めて全てのシュートを左手で打っていた。