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バレーボールPRESSBACK NUMBER
母になった木村沙織が初めて語る、子煩悩な夫との“チーム感”と出産までの知られざる葛藤…待望の長男誕生も「報告するのも迷いました」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byAsami Enomoto
posted2023/08/31 17:03
今年2月に長男を出産し、母となった木村沙織(37歳)
芸能人ばかりでなく、現役やOB、OGを問わずアスリートも結婚や出産などプライベートな話題を自身のSNSで報告するのも珍しいことではない。だがそこに寄せられるのは好意的なものばかりでなく、違う立場で見れば歓迎すべきものではないかもしれない。
特に妊娠、出産時、産後の今に至るまで、自分が何かを発することで不快感を抱く人がいるのではないか。これまでも周囲を気遣う優しさは何度も見てきたが、これまでよりも敏感になった、と木村は言う。
「世の中が変わって、子どもがいることもマストじゃないし、いろんな生き方がある。子どもは? と聞くこと自体どうなんだろう、という時代になっていますよね。本当は妊娠も出産もすごく喜ばしいことだけれど、私自身もなかなか授かることができなかったし、妊娠中もいつ何があっても、という状況だったからこそ、報告するのもどうしようかな、と思ったし、素直に喜んでいいのかな、という気持ちはずっとあったし、今もあります」
バレーボール選手の木村沙織には、いかなる時も迷いはなかった。
サーブを打つ場所、スパイクの狙う位置や決め方。たとえそれが勝負のかかった場面だろうと、迷うことなどない。これだ、と思う直感を信じてやってきた。
引退してからも周囲で支えてくれる人たちが、さまざまな方向へ導いてくれる。迷いを感じることはなかったが、年齢を重ね、親となり、社会の見え方も変わったせいか。「自分」に矢印が向いた。
「自分のことが一番よくわからないから、ものすごく優柔不断なんです。特に仕事はそうかもしれない。自分が得意なことって何? 私ってどうなんだ? とやたら考えちゃう。そもそも私、今までやりたいことをほぼすべてやって来られたから、今これがやりたい、というものがないのかもしれないです。特に今は息子のことが最優先で、自分のことを後回しにしているので、余計に自分のやりたいことは何? と言われてもハテナになっちゃうのかもしれない。でもこうして、いろんな人に支えられながらお仕事もできるようになったので、やりたいこと、探さなきゃ」
人生とは不思議なもので、迷い始めるとまた思いもしなかったところに別の道を見つけることがある。「どうしよう」とウジウジしていた木村にも、新たな出会いが訪れた。
(つづく…「天才少女の原点」編へ)