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母になった木村沙織が初めて語る、子煩悩な夫との“チーム感”と出産までの知られざる葛藤…待望の長男誕生も「報告するのも迷いました」 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byAsami Enomoto

posted2023/08/31 17:03

母になった木村沙織が初めて語る、子煩悩な夫との“チーム感”と出産までの知られざる葛藤…待望の長男誕生も「報告するのも迷いました」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

今年2月に長男を出産し、母となった木村沙織(37歳)

 ちょうど女子バレー世界選手権が開催されていたこともあり、連日試合の生中継に参加した。取材を受けることもあったし、表に出る仕事をしていない日もこれまで通り、カフェで販売するカヌレやスコーンを焼く。そして時折、お腹を触りながらまだ見ぬ我が子に声をかける。

「大丈夫? 生きてる?」

 数字上ではもっと前から安定期に入っていたが、木村の妊娠が本当の意味で安定期と判断されたのは9カ月に入った頃だった。医師から最悪の可能性は越えたと診断されたことや、隠しようもないほどにお腹も膨らんできたこと、そしてちょうど新たな年を迎えたタイミングでもあり、仕事関係への説明も含め、出産時と同様にインスタグラムで1月4日に妊娠を公表した。

「お菓子をつくっていたら陣痛が…」

 無事育っているか、産まれてくるか、という不安はあったが、妊婦の木村自身は大きな問題もなく、あえて言うならば出産直前まで悩まされたのは足のむくみ。「指の間がなくなるぐらいパンパンで、一歩歩くごとにミシ、ミシという感じ」という状態がなかなか解消されずにいたが、歩けないほどではない。そのうち引いていくだろうと思い、直前まで仕事をしながら出産の日を迎えた。

「お菓子をつくっていて、陣痛がきたので病院に行きました。無事に出産できてほっとしました。実は出産後の退院直前に大量出血して、びっくりしたけれど異常はなかった。むしろそれで浮腫みもとれたので、スッキリしました」

 当初は出産に夫が立ち会う予定はなかった。女性と比べ出血や痛みが苦手な男性も多い。産まれた直後に息子を抱いてくれればいいと思っていたが、入院していた部屋でそのまま分娩することになったため、席を外すこともできないまま、夫も流れで出産に立ち会うことになった。

 陣痛から産まれる瞬間まで、周囲を気にする余裕などない。ようやく産まれた我が子との対面は、夫婦で実に対照的だったと笑いながら振り返る。

「私は『やっと終わったー!』とハイになっていたので、旦那さんに向けてずーっとしゃべっていたんです。『普通の子だった? 大丈夫? こんなに赤黒いの? でも足の指長くない?』とか(笑)。あまりに私がしゃべりすぎるから、旦那さんは泣くに泣けなくて、喜びも噛みしめられなかったらしくて、ちょっと黙ってって(笑)。でも、産まれた瞬間は言葉が出なかった。すごく幸せな、初めて(夫の)あんな顔を見ました」

【次ページ】 改めて実感「絵里香さんリスペクト」

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