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バレーボールPRESSBACK NUMBER
木村沙織がバレーボール人生で初めて体験した「悔しい」とは? 母になった“天才少女”が未来を担う小学生たちに伝えたこと
posted2023/08/31 17:04
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Asami Enomoto
母になった木村沙織に新たな気づきのきっかけをくれたのは、子どもたちだった。
今年5月、毎年8月に開催される全日本バレーボール小学生大会のアンバサダーに木村が就任すると発表された。現役選手時代、小学生までさかのぼると数えきれないほど立ってきた東京体育館に、初めて“アンバサダー”として訪れる。
8月10日、大会最終日。男子は山王(京都)、女子は小岩クラブ(東京)、混合が深川VBC(広島)、それぞれのカテゴリーを制した優勝チームを先頭に、準優勝、3位がずらりと並ぶ表彰式に、木村もプレゼンターとして緊張気味に並ぶ。先導され、選手のもとへ歩く姿は緊張丸出しで初々しかったが、優勝の盾や記念のメダルを授与する際は、子どもたちの目線に合わせてかがみ、笑顔で一人一人に声をかけていた。
「うちの息子と写真撮ってください!」
「何年生ですか?」
「5年生です」
「すごいね。じゃあ来年も頑張ってここを目指せるね」
数十秒にも満たないやり取りではあるが、かけられたメダルを嬉しそうに触りながら、木村と同じように子どもたちも笑みを浮かべる。「もう自分のことなど知らないだろうから、ただの大きい人としか思われていない」と冗談交じりに木村は言うが、親世代にとってはスーパースターが目の前にいる。表彰式の直後や、スタンド席を訪れた際、あっという間に木村の周りには人だかりができた。
「『うちの息子と写真撮ってください!』ってたくさんの方が来てくれて、そもそもそういう感じがすごく久しぶりなので、それだけでも新鮮だったんですけど(笑)、親って子どものためにこれだけ必死になるんだな、というのが自分も親になって、少しわかるようになった。何もかもが新鮮でした」