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中日・大島洋平のプロ初安打は「守備妨害」“最も非力な”2000安打到達者が「だまされて良かった」と振り返る野球人生の転機とは?
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/26 20:01
2000安打に到達し花束を受け取る中日・大島
2000分の2が珍安打。考えようによっては避けきれない打球を打つ、走者泣かせの打者ともいえる。内野の間を鋭く抜く打球が持ち味の大島らしい記録なのかもしれない。ちなみに初安打の記念球は、当時の報道では「大切に持ち帰った」とあるが「たぶん知り合いに渡した」。自分の過去に執着しないのも大島イズムである。
転機は「食わず嫌い」だったトレーニング
ある意味で淡泊な大島が、執着し、継続してきたことがある。駒大野球部の同期でもある土田和楙(かずしげ)さんと、2015年からパーソナルトレーナーとして契約し、ウエートトレーニングを開始した。
「自分は練習がめちゃくちゃ嫌い。手を抜くことしか考えてなかったんです。ただ、やらなきゃいけないって思えたことだけは別。気が済まなくなるんです。でもウエートはその中には入ってなかった。機械でやるのに抵抗があったんですよ。やるんなら腕立てとか腹筋とか、自重でやる方が良かった」
前年(2014年)は球団最多タイでもある186安打をマークした。いわば絶頂期に「嫌い」だという世界に足を踏み入れたのは、土田さんと気心が知れていたこともあるが、その年から後輩を伴った自主トレをスタートしたため、自分以外のことも考えたからだった。目からうろこ。食わず嫌い。トレーニングに先入観をもっていた大島だが、これが野球人生の転機になった。
「やった分だけ筋肉量が増えるんだ、と」
冒頭の長打数を見てもわかるように、トレーニングによって飛距離がアップしたわけではない。しかし、体の変化は正直だった。
「パワーをつけるのが目的ではなかったですが、体重が1kg増えてたんです。ああ、やった分だけ筋肉量が増えるんだなと実感できた。そして自重でのトレーニングでは1年(シーズン)持たないって気づかされたんですよ。トレーニングすることで、自分が思った以上に体が動くようになりました」