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「これで3回目です」リバプール電撃移籍・遠藤航30歳がベルマーレと代表で噛みしめた“挫折の味”「なさそうであるんです、そういう経験が」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2023/08/25 17:04
電撃移籍で名門リバプールに加入した遠藤航。着実にステップアップしてきた30歳の日本代表キャプテンが、若手時代に味わった“挫折”とは
30歳でプレミアへ「ちょっとずつが自分らしいなと」
ピッチ上では「平均値を上げる」ことにこだわっていった。ベルマーレのユース在籍時にコーチから言われた言葉が、プロとしての道しるべとなった。
「一つひとつの要素を伸ばすのはもちろん大事だけど、『長所と短所の差がない選手だから、平均値をしっかり伸ばしていけばもっともっと成長できる』という話をされたことがありまして……。自分でもそう思ったし、プロになってからもそこは変えずに、何でもできるような選手じゃないと自分のプレースタイルには合わないかな、というのは感じています」
浦和レッズから2018年夏にベルギー1部のシント・トロイデンへ移籍し、1シーズン後にはドイツ・ブンデスリーガ2部のシュツットガルトへステップアップした。チームの1部昇格に貢献し、遠藤自身は専門誌『キッカー』のベストイレブンに選出された。
「平均値をいかに上げられるかは、自分のなかでずっと意識しているというか、レベルが上がっていくほど平均値が上がっていく感覚が個人的にある。ちょっとずつ、ちょっとずつですけれど、しっかりステップアップしてきて、次はブンデスの1部でどれだけできるか。コンスタントに自分のプレーを出せるか。そこはまた非常に楽しみです」
ブンデスリーガ1部へのデビューを飾った20-21シーズンは、27歳で迎えている。「理想を言えば22歳とか23歳でこの場所でできているというのが、思い描いていたものではあったんですけどね」と、自分を納得させるように頷いた。そして「まあでも、ちょっとずつちょっとずつステップアップしていくのは、自分らしいなとも思います」と言い添える。どちらも本音だっただろう。
30歳でのプレミアリーグ入りは、世界的に見ても珍しいと言ってもいい。それでも、慌てず、焦らず、着実に戦いのステージを上げてきた道のりを辿れば、このタイミングでのビッグクラブ移籍に必然性を読み取ることができるはずだ。
そして、ビッグクラブの一員となる野心的なチャレンジは、日本代表の未来を切り開くものでもある。カタールW杯でのベスト16敗退を受けて、遠藤は新たなノルマを自らに課していた。
「所属クラブで試合に出続けなければいけないし、ステップアップできるのであれば、そこでもポジションを勝ち取る。そういう選手が、もっともっと増えていかないといけない」
有言実行のシーズンが、始まった。