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鎌田大地ラツィオ初陣取材…どころか「頼むからラジオに出てくれ!」日本人記者が逆取材された件「シコクってどこ?」「ダイエ、ダイチ!」
posted2023/08/26 06:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Marco Rosi-SS Lazio/Getty Images
ほろ苦い初陣だった。
8月20日、ラツィオMF鎌田大地はレッチェとの開幕戦に先発し、セリエAデビューを飾った。
イタリア入りしてわずか2週間ばかり、コンディションの調整具合を考慮した地元紙はベンチスタートと途中出場を予想していたが、驚きの開幕スタメン起用だった。
新型“サッリ・ボール”のキーマンは鎌田
北からの強い向かい風の中、鎌田は7日前のテストマッチ同様、4-3-3の右インサイドハーフとして中盤に構えた。セリエAの日本人MFといえば中田英寿(ローマなど)や名波浩(ヴェネツィア)、中村俊輔(レッジーナ)に小笠原満男(メッシーナ)の名が思い浮かぶが、純粋な3枚の中盤で開幕戦に先発起用されたのは鎌田が初めてだ。
前方の右ウイング、フェリペ・アンデルソンへとワンタッチで繋いでクロスを呼び込み、対角の右FWザッカーニには縦のロングパスを放つ。攻守のスペースを読んで走り込み、絡まれ倒されてもポーカーフェイスですっくと立ち上がり、相手を苛立たせる。
何も知らないニューフェイスとはわけが違う。流石にブンデスリーガと欧州カップ戦で揉まれてきただけあって、初めてのセリエAでもマウリツィオ・サッリ監督好みの気の利いたプレーを随所に見せた。
リーグ屈指の指揮官は代名詞である、動いて繋いで崩す「サッリ・ボール」を“新型”へモデルチェンジしようとしている。進化のキーマンはずばり、鎌田だ。
4-3-3の布陣は不変だが、鎌田の前任者であり昨季まで中盤の要だったセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチはヘビー級のサイズを持つフィジカル・プレーヤーだった。前任のシモーネ・インザーギ監督(現インテル)の用いた3-5-2で才能を開花させ、2年前に就任したサッリのスタイルにも器用に対応した。
「しかし、サイズの優位性と引き換えに彼は走らなかった。スピードもなかった。サッリの理想からすれば(左インサイドハーフの)ルイス・アルベルトも運動量が足りないし、タメを作りすぎる嫌いがある。昨季まではそれでよかったが、今季はチャンピオンズリーグがある」
ミリンコビッチが大鉈なら、鎌田は日本刀
昨季からの変化を説くのは、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のベテラン番記者ステファノ・チエロだ。ミリンコビッチを質量でぶった斬る大鉈に喩えるなら、さしずめ鎌田はシャープな斬れ味の日本刀だろう。