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「これで3回目です」リバプール電撃移籍・遠藤航30歳がベルマーレと代表で噛みしめた“挫折の味”「なさそうであるんです、そういう経験が」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2023/08/25 17:04
電撃移籍で名門リバプールに加入した遠藤航。着実にステップアップしてきた30歳の日本代表キャプテンが、若手時代に味わった“挫折”とは
「これで3回目です」遠藤航の“苦い経験”
アンダーカテゴリーから日本代表に招集され、2016年のリオ五輪ではU-23日本代表を主将として牽引した。その経歴はエリートの香りを漂わせるが、遠藤は人知れず挫折を経験している。
「プロとして公式戦にデビューした10年6月のリーグカップは、前半で代えられているんです。その年のJ1デビュー戦も、前半で交代でした。なさそうであるんです、そういう経験が」
話に出たリーグカップのモンテディオ山形戦は、前半のうちに2点をリードされる展開だった。J1リーグの川崎フロンターレ戦も、前半を1対3のビハインドで折り返している。反町康治監督は追いかける展開のなかで攻撃のカードを切ったのだが、遠藤の胸には「チームに貢献できなかった」という悔しさが刻まれた。
日本代表でも同じような苦みを味わっている。ヴァイッド・ハリルホジッチ指揮下の15年11月、遠藤はロシアW杯アジア2次予選のカンボジア戦にスタメン出場する。同年8月の東アジアカップ決勝大会で代表デビューを飾っていたが、海外組を含むメンバーで初めて先発に名を連ねた。
所属する湘南ベルマーレでは3バックの一角が定位置で、東アジアカップでは右サイドバックで起用された。そしてW杯2次予選ではダブルボランチの一角を任された。久しぶりのボランチで持ち前のポリバレントさを示したいところだったが、チームは格下のカンボジア相手に前半をスコアレスで終える。
ハリルホジッチ監督は、後半開始からボランチを一枚替えた。ベンチに下がったのは遠藤だった。
チームは後半に2ゴールをあげ、敵地で勝ち点3をつかんだ。
試合後の遠藤はベルマーレでの経験を持ち出し、「これで3回目です」と悔しさを口にした。それでも、負の感情を引きずらない。
「自分らしさを出せなかった悔しさはしっかり持ちながら、反省して、成長して、結果を残せるようにしていきたいです」と、すっきりとした表情で話した。その時々で最適解を探し出し、一貫性を持ってやり続けることが、遠藤航というフットボーラーの“芯”なのである。