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「メンタルが複雑骨折」鎌田大地27歳ラツィオ移籍までの苦悩を激白…幻の背番号14、“グチ聞き役”の長谷部誠から「“ラツィオいいじゃん”と」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/08/20 11:09
23年6月、NumberPREMIERトークショー後の鎌田大地。新たに明かしてくれた、ラツィオ移籍までの苦悩とは?
「(人員整理をする前に)獲得することができなくなった。やはり、ファイナンシャルフェアプレーに抵触する恐れがあるから、今いる選手を売却してからでないとサインはできない。それでも、必ず……」
メンタルが複雑骨折しているくらい、イカれていました
半日以上かけてフランクフルトまで来て、この仕打ちか。さすがにありえんやろ!
そう思わずにいられなかったが、苦しかったのはそこからだ。該当選手の売却がいつ決まるかわからない。かといって、夏休みの学生のように毎日ゴロゴロしていられるわけがない。練習できる環境はないから、フランクフルトの街で走り込みを続けて、コンディションを保つしかなかった。
「メンタルが複雑骨折しているくらい、イカれていました」
冒頭のように表現したのは、この時期のことだ。
しかも、実際に1日、2日、3日……と待っていても、一向に選手の売却が進む気配がないのだ。あまりにイライラしているため、日本にいる個人マネージャーで、東山高校時代の同級生を呼び寄せることにした。彼がいれば、一緒に走ったり、公園でボールを蹴ったりできるからだ。そして、もちろん、グチも聞いてもらえる。心身共に支えてくれる安心材料をくれる。
ただ、それだけではない。フランクフルトに滞在していたからこそ、救いになる先輩がいた。
昨シーズンまでチームメイトとして計5年間ともに戦った長谷部誠だ。
ハセさんと計3回くらいは食事に行って、散々…
長谷部も移籍をめぐって苦しんだ時期があったし、鎌田の気持ちもよくわかってくれる。3日に1回ほどの頻度で長谷部と食事に行くことになった。自分の生活リズムをきちんと守ることで知られる長谷部が、それだけ時間を割いてくれる。先輩の優しさが身にしみた。
「ハセさんと計3回くらいは食事に行って。そのたびに、散々、グチを聞いてもらう感じでした」
ただ、幸いだったことがある。そんな状況でもひっきりなしに、鎌田に対して他のクラブからも獲得についての問い合わせが来ていたのだ。
この時点で所属クラブがないために十分なトレーニングをする環境がなかったのは痛かったが、移籍金がかからずに取れるというのは各クラブにとっては魅力的だったようで、引く手あまただった。長谷部にはグチを聞いてもらうかたわら、自分に関心を寄せてくれるクラブについての意見を求めることもできた。
そのような時間が9日あまり続いたのだが、契約をすると“約束”してくれたクラブの人員整理は一向に進まない。サウジアラビアのクラブがヨーロッパの移籍市場に介入してきたことや、例年に比べて選手間の移籍が決まるタイミングが遅れるなど、様々な理由があったとはいえ、まだ見通しはたたない。そのクラブは「8月末までには間違いなく契約できる状態になるから」という意向を示していたのだが……。
「ありがたいことにオファーに困らなかった」ワケ
何より問題なのは、フランクフルトにいては十分な練習ができないこと。日本にいれば母校のグラウンドで練習をすることができる。移籍交渉も大事だが、移籍をするのはこれから始まる冒険のスタートラインに立つことにすぎない。