スカウトの本音は…

　巨人・水野雄仁スカウト部長「スタミナはもともとある。何とか粘って投げているし、投げ切れたらよしとしないといけない」

　阪神・吉野誠スカウト「球数が160球を超えても140km後半が出る。いいモノを持っている。タフさもありますよね」

　細野が一躍、脚光を浴びたのは、ちょうど1年前だった。中央大学との春の入替戦の1回戦で155kmをマーク。２日後の３回戦でも７回無失点と好投し、株を上げた。左投げの剛腕は希少価値が高く、まだ3年生だったが、スカウト陣を「今年のドラフトでも1位で消える」と言わしめたほどの逸材だ。

ブルペンで投球練習する細野　©︎JIJI PRESS

　広島の苑田聡彦スカウト統括部長は今年４月末、この粗削りの左腕を「上体と下半身の（動きの）バランスが合った時のストレートは素晴らしいモノがある。それを見ているだけに、これからどう評価していくか」と評し、現役時代の遠い記憶と重なったのか、みずから、カープのサウスポーの名前をあげた。

「大野はね……」

　通算148勝138セーブを挙げた快速球左腕、大野豊である。

カープの伝説的投手である大野豊　©︎Makoto Kenmizaki

「左投手はカーブを放れればいいと思うんだよね。（投手はえてして）不思議だけど、スライダーを教えれば、カーブの精度が悪くなる投手もいる。大野はね、最初、他球団の入団テストを受けるという話になっていた。大野がスカウトの木庭教さんに挨拶したら『練習していけよ』ってなった。木庭さんが大野を評価していたからね。外野で僕がキャッチボールの相手をしたんだ。いいカーブを投げるんだね。それを古葉（竹識）監督にも伝えたよ。よそのテスト、受けさせたらダメだぞってなったのを憶えてるね」

　目の前では細野が投げていた。この日はあまりカーブを投げなかったが、要するに緩急が生きれば、もっと投球の幅が広がるという話だった。広島の一時代を築いた伝説の投手を引き合いに出すあたり、将来性について大きな期待を抱かせる。

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