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MAX155kmに「もっと出そうな感覚がある」“ドラ1候補”東洋大・細野晴希の「本当の評価」と伸び代…阪神・村上との衝撃の出会いが転機に
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/08/04 11:00
プロ注目左腕の東洋大・細野
余談が長くなったが、ともかく、この日はどれだけ球数が増えても、マウンドを譲らなかった。8回に打線が援護し、5点差に広げても降板しなかった。すでに160球を超えていたが、当たり前のように9回まで投げ切った。井上大監督に「勝っている間はお前で行く」と言われていたこともある。昨年の入替戦は7回無失点と好投したが、サヨナラ負け。細野も苦い記憶をたどり、この日を迎えて覚悟を固めていた。
「短期決戦なので結果がすべて。内容はどうであれ、1点で抑えられたのはよかった。あのとき(昨年の入替戦)は僕のなかでは最善の選択をしたつもりだったけど、振り返ったら後悔が残った。今年は全部、投げてやろうという気持ちで戦いました」
大黒柱らしく、責任感の強さをにじませた。最終学年になり、細野には決意がある。
「今回、1部に上がって、秋に1部優勝して日本一になりたい。大学での最終的な目標はそこですね」
憧れの右腕の背中を追って
この日からの駒大との1部・2部入替戦は夢をつなぐラストチャンスだった。負ければ2部のまま学生生活が終わる。すなわち、日本一の野望は潰えてしまう。そんな瀬戸際で踏みとどまれる強さをみせた。
この春は、プロ志望の細野の目線をさらに高めてくれる人がいた。
阪神の村上頌樹である。今季、先発の一角としてブレークし、球宴にもファン投票と選手間投票で選出された気鋭の右腕だ。
東洋大学の先輩で、細野が1年のころ、声をかけることもできなかった4年生のエースである。テレビで目の当たりにして、胸をなでおろした。
「凄いという言葉しか出てこないです。シーズン序盤は完封もされていた。すごくコントロールがいいと評価されていて、僕も安心しました。あのときの村上さん、やっぱり、コントロールがいい方だったんだって」