「ほとんどの選手は最初の電話に出ないから、『栗山です、また電話します』というメッセージを残すんです。そうするとすぐに電話がかかってくるパターンが多かったですね。でも中野の他に宮城（大弥）も普通に『もしもし、宮城です』って感じで電話に出たんですよ。ああ、思った通りだなと（笑）。宮城に関しても僕はあの大らかさが好きで、自然に野球をやっている感じがいいんです。生活の中に普通に野球がある感じ……そういう選手って大事なところできちっとスイッチが入るんですよ。宮城にもそういう空気を感じました。あとは（中村）悠平にメッセージを残したら、すぐに明るい声で『監督、すみません、ちょうど電話中でした』ってかけ直してくれて、僕はその声のトーンにホッとしたんです。悠平って春先は体調面での不安もあったし、大丈夫かなと思っていたところへ、たった一声でこちらに安心感を与えてくれる。ピッチャーも不安なく投げられるでしょうね」

今年1月の会見で、大谷に”ツン”発言に苦笑いを浮かべる栗山英樹監督　©︎Nanae Suzuki

――大谷翔平選手についてはどんなふうに口説いたんでしょう。

「翔平？　口説いてませんよ（笑）。だって僕は最初から翔平は絶対に来ると思っていましたし、むしろ、しゃらくさい言葉を使うと彼の場合は逆効果ですからね。翔平の魂を疑ったこともないし、信じて待っただけです。余計なことをしないように、アメリカで翔平と会ったときも、本当に何かを伝えたいときって言葉よりも魂が大事なんだなって、そう感じさせられました。陳腐な言葉は言わない。日本の野球にとってどれほど大事なことなのかということを誰よりもわかっているのは翔平ですから」

着信を見たら翔平だったから…

――大谷選手の場合は、彼のほうから電話が掛かってきたんでしたね。

「あのときはビックリしました。着信を見たら翔平だったから、うわっ、これは何かアクシデントでもあったのかと怖くて、すぐに出られなかったんです。だって僕にとってのいい話だったら、何も翔平は直に連絡しなくてもいいじゃないですか。（通訳の水原）一平を通してOKですと伝えてくれれば済む話なのに、わざわざ僕に電話を掛けてくるということは、これはケガとか事故とか、何かがあったんじゃないかと胸がザワッとしたんです。でも普通の声で最初、全然、違う話をしてきたから、あれっと思っていたら、最後に『あのー』とか言って、『出ます』と（笑）」

【続きを読む】雑誌ナンバーの記事がすべて読めるサブスク「NumberPREMIER」内の「最後は魂が決する」「理想は大谷翔平が９人…」栗山英樹がWBCで“ひとつだけ誇れる仕事”とは？【総括インタビュー】で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。

Number1077号「団結力は、いかにして生まれるのか」 書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします