――WBCで世界一になりました。栗山さんが監督として掲げた目標を叶えてくれた今回の日本代表、いいチームだなと感じたのはどの瞬間だったんでしょう。
「それは……ないですね」
――えっ、ないんですか。
「監督って、よくこういうチームで戦いたいとか、理想のチームを作りたいと言いますけど、僕はそういうものはないと思っています。監督というのは理想のチームで戦うんじゃなくて、目の前にあるチームでいかに勝ちやすい形を作るかということが仕事ですから……理想というなら、大谷翔平が9人いればいいんだ(笑)」
――栗山さんの中には、いいチームの定義はないということですか。
「結果がこうだったからいいチームだったという表現は僕の中にはありません。『動機善なりや、私心なかりしか(稲盛和夫)』の言葉通り、動機が普遍的に善で、自己中心的な私心がなければ、結果を問う必要はない。すべての人が命がけで私心を捨てて勝ちに向かってくれたとき、その魂は必ず伝わります。
そういうチームであってほしいとは思っていましたし、実際、今回のチームはそうでした。あれだけのトッププレイヤーがみんな、自分のことを捨てて勝とうとしてくれていた。そのことに対する感謝と感動はものすごくありました」
――とはいえ、その魂を感じたのは(キャンプ地の)宮崎ではないでしょう。WBCの実戦で勝ち進んでいくうちにそういう想いに至ったということですよね。
「それはそうですね。でも本当にそれぞれの試合でこの子たちは必死になっていると感じていました。それが準決勝であったり、決勝のあの流れにつながっていったんだと思います」
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