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「なぜ野球と縁もゆかりもない大学に…」プロ野球スカウトも注目の196cm、110kg “伊勢のガリバー”が語った「野球の公式」とは? 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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posted2023/07/15 17:01

「なぜ野球と縁もゆかりもない大学に…」プロ野球スカウトも注目の196cm、110kg  “伊勢のガリバー”が語った「野球の公式」とは?<Number Web> photograph by チーム提供

NPBプロ野球選手はいまだいない皇學館大学所属ながらプロも注目する村田怜音。196cm、110kgの大器だ

サイズに頼らない”合理的なスイング”

「『あれだけ振ってきたんだから、打てないわけがない』……そういう意識で打席に入れるようになって。そうなるともしダメでも、『あれだけ振ってダメなら仕方ない』と、いい意味の割りきりができて、サッと切り換えられたんです」

  それが、夏までのわずか4カ月で22弾の量産につながった。

   バッティングを見ると、決してサイズに寄りかかった力任せのスイングではない。むしろ、きちんと芯でミートして、スイングの合理性にパワーを上乗せして、打球を飛ばすスタイルだ。

 それでも、語りぐさになっている大学生ばなれどころか、人間ばなれした驚弾は何本もある。

  リーグ戦の会場である三重・安濃球場センター122mのスコアボードのてっぺんにある時計にぶつけた推定140m弾もあれば、秋の明治神宮大会出場を賭けた試合で、ダイムスタジアム伊勢(元・伊勢市倉田山公園野球場)のバックスクリーン左の上空を消えていった150m級の大アーチ。

「低めの変化球……スライダーだったかな。金沢学院大の堀本っていう、結構いいピッチャーからでした。でも、バッティングは飛距離より形だと思っていますから、ちゃんとしたスイングをしたい。ミートの精度とハードコンタクト。ミスショットを少なくしたいんです」

  頼んで、目の前で披露してもらったティーバッティングの連続打ち。

「10本はいけます!」

  最後の10本目まで、ひと息で全部ジャストミートだ。

「イメージとしては、バットをグリップから出して、ボールの左下に入れておいて、最後は目一杯、ヘッドを振り抜く」

  思ったより、ずっと細かい単位で、「野球」というものを捉えようとしている。

プロのスカウトが評する村田の魅力

「まず、このサイズですよ。そのサイズそのものが1つの才能だし、見えなくなるほどボールを飛ばせるのは、何よりの魅力」

 あるスカウトは、高校時代から村田を見てきたという。

「あの大きな体をもっと大きく見せるように背すじをキリッと伸ばして打席に立たれたら、バッテリーにとってはこんなに怖い存在はない。なのにちょっと打てないと構えが小さくなって、合わせるような打ち方になってヒットを欲しがる。真面目なんだと思いますよ。人一倍飛ばせるのはもう十分わかっているし、心配していたフィールディングも上手くなっている。あとはチャンスの場面で合わせたヒットじゃなく、彼本来のしっかり振り抜いたスイングでタイムリーが打てる……そんな場面を見せてほしい」

【次ページ】 「人の見ていないところでも練習できる」

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