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JリーグPRESSBACK NUMBER
彼はなぜ自転車で川崎から神戸に…?「長津田でやめたくなりました(笑)」600kmを走り抜いた川崎Fサポの“ロードムービーのような旅路”
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byNumber Web
posted2023/07/15 11:00
川崎~神戸間の約600kmを自転車で走破した小野田治矢さん。彼は何を思って「チャリ神戸」に挑んだのか
悪天候にも疲労にも負けず、2日目は最長距離の140kmを走った。
雨の降る夜の峠道で心霊スポットの「夜泣き石」と不意に遭遇し、泣きそうになりながらも静岡県内を突き進んだ。命からがら目的地である浜松のホテルに辿り着くと、すぐさま爆睡。疲れ果てていたので眠りは信じられないほど深く、目が覚めたのはチェックアウト時間の20分前だった。
“他サポ”の応援や心遣いに感激
3日目からは、反響も明らかに増えてきた。
国道の看板の写真を撮ってアップすると「そこ、実家のめっちゃ近くです!」とリプライが飛んでくる。フロンターレではなく、他クラブのサポーターから「頑張ってください」という応援が届くようにもなった。小野田さんにとって、かつて味わったことのない新鮮な感覚だった。
「どこにでもいる一般人なのに、まるでアスリートのような気持ちを疑似体験できたというか……。自分の人生でそんな経験は今までなかったので、ありがたかったですね。3日目には、名古屋サポーターの方から『ぜひおもてなししたいので連絡ください!』とDMが届いたんです。名古屋のあんまきをごちそうになり、ういろうも買ってくださって、自転車で観光名所や神社を案内してくれました。勝手に始めて、勝手に苦しんでいる他クラブのサポーターに、なんでこんな親切にしてくれるんだろう……って感激しましたね。そんなこと、いつもの生活じゃありえないじゃないですか」
小野田さんの自転車旅は、雨との戦いでもあった。
台風2号の接近により、各地で線状降水帯が発生した。天候に恵まれても決して楽ではない600kmの旅路は、風雨によってますます険しい道のりになった。もちろん、試合中止のリスクもゼロではない。そんな状況下で、何を思いながらペダルを踏みしめていたのだろうか。
「台風の情報はあったんですけど、試合が中止になるとは考えもしませんでした。いや、なんとなく『もしや……』とは感じていたんですけど(笑)。そこはもう現実逃避というか、なるべく考えないようにしていましたね」
そして、この悪天候が想像もしていなかった光景を小野田さんに見せることになる。
<#2に続く>
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