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JリーグPRESSBACK NUMBER
「川崎から自転車で来たんですよ」「この台風の中で?」神戸まで残り36kmで試合中止…“ある川崎Fサポの悲劇”が感動的な結末を迎えるまで
posted2023/07/15 11:01
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
Haruya Onoda
川崎Fのユニフォームが支えになった
川崎育ちの小野田治矢さんが、川崎フロンターレのサポーターになったのは2019年のことだ。
味の素スタジアムで観たFC東京との多摩川クラシコ(2019年7月14日/第19節)で、完璧とも言える内容で3-0の完勝。会心のゲームにハートを撃ち抜かれた。
「その試合が最高に面白かったんですよ。完全にハマって、すぐに後援会に入りました。3点目を決めた阿部ちゃん(阿部浩之/現・湘南ベルマーレ)のユニフォームを買って『推してくぞ!』って。次の年に移籍しちゃいましたけど(笑)」
小野田さんは「チャリ神戸」に5枚の選手ユニフォームを持参し、日替わりで着用して走っている。
2019年から、毎年1枚ずつ購入してきたものだ。歴代選手を振り返ると、19年は阿部浩之、20年は長谷川竜也、21年は三笘薫、22年は宮城天、そして今年が名願斗哉だ。共通点があるとすれば、「左サイドで自ら突破口を作るタイプ」といったところだろうか。
「ゴールを目指して、自分で切り開いていくタイプが好きなんです。僕自身、彼らのように前に向かってチャレンジする気持ちを少しでも持っていたいので」
歴代の“推し選手”のネームが入ったユニフォームを着て走ったことで、過酷な自転車旅の間も「本当に勇気づけられました」と話す。
「彼らの存在が背中を押してくれるんですよ。例えば2日目の途中でやめたら、そのときに着ているハセタツ(長谷川竜也)に申し訳ないじゃないですか(笑)。3日目の三笘薫のときは一番楽に快走できたので、やはり“持っている男”ですね。4日目の宮城天も、ゴールしていたときに着ていた名願斗哉もそうですが、挫けそうな心をユニフォームが支えてくれました。普通のTシャツだったら、結果は違ったかもしれません」
サポーターにとってユニフォームとは、特別な力が宿るアイテムなのだ。