大阪桐蔭・西谷浩一監督の「すごさ」とは？　

　横井監督はとにかく“熱血漢”だ。

　部員が100人を超える大所帯の金光大阪で、選手の能力差に関係なく一人ひとりの選手と向き合い、本音をぶつけ合う。そんな中でも冗談を交えながら選手の心も掴む。選手目線でグラウンドではノックから選手との対話を大事にしている。その熱意に応えるかのように、試合では控え部員も大きな声援を送り、チームの一体感がとにかく強い。大阪桐蔭戦も、その大声援がナインの後押しとなった。

　大阪桐蔭・西谷浩一監督も選手との距離感の取り方が絶妙に上手い監督だが、横井監督から見ると西谷監督は「究極の負けず嫌いな方」だという。

金光大阪・横井監督は大阪桐蔭・西谷監督を「究極の負けず嫌い」と評する　©Hideki Sugiyama

「勝てば勝つほど負けず嫌いに拍車がかかるんです（苦笑）。だから府内でも余計に負けられなかったと思います。考えてみれば56連勝ってすごい数字ですよ。7大会で負けていないんですから。でも、負けたことによって楽になる部分はある。そこは、この夏はちょっと怖いんですよ」

　横井監督は西谷監督がまだ大阪桐蔭のコーチだった頃に初めて出会った。

　以降、府大会に限らず、府内の私学大会などでも顔を合わせ、何度も言葉を交わしてきた。「心から尊敬している」と話す名将の凄さをこう語る。

「西谷監督はマネジメント能力が凄いです。すごく調子のいい選手がいても、適度に（起用を）抑えて、調子が悪い選手がいたら浮上する機会を見据えて、タイミングよくポンっと起用する。3年生の気持ちをうまく乗せて、最後に3年生に託す。人心掌握術と言いますか……。うまい選手をかき集めているとか、そういうことじゃない。選手の見方が、ちょっと違うなって思うんです」

無欲な選手たちが目指す、王者との決戦

　今夏の府大会では3回戦まで大阪桐蔭との対戦はない。だが、4回戦の前、準々決勝前と再抽選が行われる大阪では、どのタイミングで対戦するのか現時点では分からない。

チームのエースであるキャリー（中央）の成長には横井監督も目を細める　©Fumi Sawai

「今年はどこで対戦できるんでしょうね」と嬉しそうに指揮官が話す金光大阪も、春の府大会覇者として注目の的になる。無欲な選手たちが、春の続きを夏も描いていくのか。はたまた、また違った顔を見せてくれるのか。

「大阪はどうしても、大阪桐蔭と履正社ってなりますけれど、僕らも一応、毎年必死なんで……（笑）。それは他の（大阪の）学校の指導者さんも同じ。今年も必死にやっていきます」

“台風の目”じゃない。今夏も金光大阪は何かを起こす、ではなく絶対に何かをやってくれる。

　110人の部員の野太い声が響くグラウンドに宿る“無心の闘志”。今夏はどの試合、どんなタイミングで炸裂するのだろうか。

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