マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大谷翔平にあの“ヒザつき本塁打”を打たれて「とても悔しいです…」阪神・才木浩人24歳、“公立の星”ドラ3ピッチャーが佐々木朗希に勝つまで
posted2023/06/23 17:04
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
JIJI PRESS
どんな野球を取材した帰りだったか……「グリーンスタジアム神戸」かその第2球場からの帰路、三宮に向かう電車の窓からボンヤリ景色を見ていたら、ちょっと向こうのほうに学校が見えてきて、「須磨翔風高校」と大きく書いてあったから、エエッと思った。
「須磨」といえば、東京に住む者からすれば、海辺の感覚なのだが、そこは三宮の街中から電車で30分ほどの「山の近く」である。
須磨翔風は山の近くにあるのか……と思いながら、その次の駅でふらりと降りたのは、当時そこに「才木」という本格派右腕がいると、聞いていたからだ。
ちなみに須磨翔風は神戸市立の公立高校である。校舎に沿って高いネットが巡らしてあって、そのネット越しに野球部の練習が見え、長身の右腕がマウンドで腕を振っている。シートバッティングだったのか、きれいなタテ軌道のしなやかな腕の振りが印象的だった。
あれが才木なんだな……そう思って、夏の予選で取材に来ることを決めた。新幹線の時間があったから、その日はそれだけで駅に戻ったことを覚えている。
当時のプロ野球スカウト「好きなのは、才木」
2016年の高校3年生。
この年の春、センバツ高校野球ではエース村上頌樹(東洋大→現阪神)が奮投して智弁学園(奈良)が優勝した。夏の大会に向けて、近畿地区では、その村上を筆頭に、平内龍太(神戸国際大附・185cm84kg<当時>・右投右打・亜細亜大→現巨人)、京山将弥(近江・182cm75kg<当時>・右投右打・現DeNA)の本格派右腕が、注目の存在に挙げられていた。
その頃の取材メモを見ると、スカウトの方たちのコメントとして、このような事が書かれている。