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元ロッテ選手が築地市場でマグロを並べて…本人が明かす“激動の引退後”「パパはなんでいつも家にいるの?」「ハローワークで仕事を…」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byNumber Web
posted2023/06/17 11:00
異色のロン毛姿で知られた「元プロ野球選手」水上善雄さん。激動の引退後を語ってもらった
「伝説的投手」からコーチの依頼も拒否
91年、水上は100試合に出場し、8月16日の近鉄戦で1000本安打を達成。ベテラン健在をアピールしたが、翌年は6試合の出番に留まった。シーズン終盤、南海黄金期のエースで編成部長の杉浦忠は「トレード先を探したが、なかった。来季はファームのコーチで頑張ってくれないか」と打診した。願ってもないオファーのはずだったが、水上は首を横に振った。
「現役の時、コーチという職業にしがみついているような人も見てきた。選手が怠慢プレーをしても、嫌われたくないから黙っている。球団に伝えられたら、クビになるかもしれないと恐れているように見えた。だから、何か気持ちが乗らなかったんですよね。引退してすぐコーチになると、球団に媚びてるような気がしてしまった」
なぜ築地市場で勤務?
金田に続き、日本シリーズ4連投4連勝を成し遂げた伝説のピッチャー・杉浦の依頼も断った。引退してから半年間、働かずに過ごしていた。すると、小学3年生の娘が素直に疑問をぶつけた。
「パパはなんでいつも家にいるの?」
水上はアルバイトを自ら探し始めた。だが、ツテを辿れば就職先は難なく見つかったはずだ。
「誰かの紹介で就職すると、辞めたいと思っても辞められない。だから、何のコネもないところで働きたかった。夜12時から朝8時まで、築地市場で競りにかけるマグロを場内に並べる“小揚げ”という仕事を選びました。岸壁に止まったトラックからマグロが出てくるので、滑って海に落とすケースもありましたし、人が転落する時もありました。常に危険と背中合わせでしたね」
コインパーキングの集金も…
深夜から早朝まで働きながら、午後は小学生の息子に野球を教えた。睡眠時間を極度に削った体は悲鳴を上げ、3年で築地から離れた。