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「諦める必要はない」ジェイソン・ブラウンが現役続行を決意した“両親からの涙の電話”「来季もショーと競技を続けていく」《独占インタビュー》 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2023/05/16 11:02

「諦める必要はない」ジェイソン・ブラウンが現役続行を決意した“両親からの涙の電話”「来季もショーと競技を続けていく」《独占インタビュー》<Number Web> photograph by Akiko Tamura

「アイスシアターオブニューヨーク」のガラと授賞式に登場したジェイソン・ブラウン

「来季もショーと競技を続けていく」

 一時は腰を痛めた時期もあったが、現在は体調は万全であることも理由の一つだ。

「僕のトレーナーも、まだやりたいという気持ちなら、続けたら良いよと言ってくれました。現在は体幹を鍛えることと、フィジカルセラピーにたっぷり時間を使っています。氷上の練習時間は以前よりも少し減りました。またセクションごとに分けた練習ではなく、全体のランスルーが多くなりました。この1年で、全部で6プログラムもこなしたんですよ。常に何か新しいもの、クリエイティブなことに集中できていると思います」

 ショーと試合を両立することを、トレイシー・ウィルソンコーチも賛成してくれた。

「トレイシーは、アイスショーに出たいのなら全面的にサポートするけれど、半端なショー演技だったら協力しない、とはっきり言われました(笑)」

 先シーズンは、全米選手権の前など、2週間ずつ何度かに分けてトロントに戻ってトレーニングをした。

「今季は試験的にこのような形でやってみたけど、成功だったとコーチたちも言ってくれました。フルシーズン競技に出場することは無理だけど、おそらく来季も今季と同じようなペースでショーと競技を続けて行くだろうと思います。もしかして全米の前に調整のためにBクラスの大会に出るかもしれないけれど、それもコーチと相談します」

10歳年下の全米王者・マリニンへの思い

 今シーズンの大会は4回転へのこだわりを捨てて、彼ならではの芸術的なプログラムを演じることに集中した。その一方で現在の全米チャンピオン、イリア・マリニンは4アクセルなども跳ぶ驚異的なジャンパーだが、表現力ではまだまだ。ジャンプのマリニンと芸術家のジェイソン、対照的な二人が全米のトップにいるのは興味深い。

「このスポーツは年齢的な経験もとても重要です。ぼくだって18歳の頃は、コンポーネンツは高くなかった。技術的には彼がやっていることは想像もつかないくらいすごいことです。技術と芸術と、両方からプッシュする選手がそれぞれいるのはエキサイティングなことだと思います」

 28歳のジェイソンは10歳年下のマリニンを庇った。

氷上のストーリーテラーのこれから

 先日筆者がインタビューしたパトリック・チャン(「ダイスケとぼくが競っていた頃とは、ずいぶん変わった」)は、今の採点方式では氷の上でストーリーを表現することがほとんど不可能になった、と言った。そんな中でも、ジェイソンは数少ない氷上のストーリーテラーだ。

「僕自身は、氷の上でストーリーを語ることを常に目的にしてきました。自分のリミットをプッシュして、どのようにその表現を競技に持ち込んでいくかを常に考えています。半年競技を休んで、ジャッジにどのように採点されるのかわからなかった。でも演技が高く評価されたことは嬉しいです。4回転を6回降りられなくて、競技生活から押し出された選手もたくさんいる。でも諦める必要はないんだ、と伝えたいです」

 ガラ公演は、ワード振付による「メランコリー」を披露。ニューヨーカーたちから大きな拍手と歓声を浴びた。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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