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プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ダルビッシュ有から届いた深夜のLINE「部屋、どこですか?」WBC村田善則コーチが振り返るアメリカ戦の舞台裏「あれ、投げるの?」の問いに…
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2023/04/21 11:01
チームを陰に日なたに支えたのは、最年長のダルビッシュだった
「そこからダルビッシュの質問がすごく増えてきた。ざっくり強いといってもカウントでかなり変わるよねとか、この状況だとこうじゃないかというのを、すごく興味深そうに彼が拾ってくれた。そんな感じで時間のあるときに彼も参加して進めていたんですね」
その延長でのアメリカ戦だったのである。
ダルビッシュ登板までの舞台裏
今大会で日本代表はデータスタジアムから各国代表のデータを収集。ほとんどは現地のデータ会社のものをそのまま集めてきたものだった。
「だからメジャーのスタットキャストだとかそういうデータと、我々が持っていたデータは変わらないものなんですね。多少のシステム上の違いで、見えるバランスっていうのが違うんですけど、もともとは同じようなものを持っている。で、メキシコに勝ったことで、翌日すぐにアメリカの試合があった。多分、ダルも分かった上での行動だったと思います。だから僕の中では資料を持ってきたっていうよりは、どちらかというとその思いを持って来てくれたみたいな感覚だったんですね」
そしてこのダルビッシュの行動にはもう1つ、別の背景もあった。
実はこの時点で決勝戦は先発の今永昇太投手から二番手の戸郷翔征投手につなぎ、その後も小刻みな継投で行くことは決まっていた。しかしダルビッシュと大谷がマウンドに上がれるかどうかは未確定だったのだ。決勝進出が決まって、2人は急遽、リリーフ登板の許可を所属チームに掛け合っている。最終的にはそれぞれ許可をもらって、あのような継投が実現するわけだが、この時点ではダルビッシュもまだ翌日に投げられるかどうかは分かっていなかったのだ。
だからこそ自分のできることを、いまチームのためにできることをやりたい、やらなければならないという思いが、深夜のこの行動になったのだろう。
「僕はそう感じ取ったんですよね」
村田コーチは静かに振り返った。