だが、そこから10時間もしないうちに事態は急変する。ダルビッシュと大谷に登板OKという球団からの回答が来たのだ。

「あれ、投げるの？」の問いにダルが…

　翌日の球場への移動のバスの車中。村田コーチはすぐ後ろに座ったダルビッシュに、昨晩のお礼を言い、資料をそこで「返そうか？」と聞いた。すると登板のないはずのダルビッシュが「お願いします。ちょっと見ようと思っていたんで」と言い、こんな質問をしてきた。

「資料を見て、どうやってキャッチャーに話しました？」

　その瞬間に村田コーチは全てを察知した。

「あれ、投げるの？」

　村田コーチの言葉にダルビッシュは小さく頷く。

「状況によっては……」

決勝の大一番が始まる　©︎Naoya Sanuki

「そっか。じゃあ　みんなでしっかり繋いでいくよ」

　村田コーチはそう言って後ろの座席を振り返った。

　ダルビッシュは頷くと、すぐに手渡された資料を開いて目を落とし始めた。

＜続く＞

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