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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「えっ! GKなのにドリブル?」飯倉大樹36歳は引退決断のタイミングでなぜF・マリノスに復帰したのか「こんなに俺を好きでいてくれたの?」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/04/08 11:04
3年半ぶりに古巣の横浜F・マリノスに復帰したGK飯倉大樹(36歳)。自らのGK論や移籍にいたる心情を明かした
「待っていたらホントに果報がやってくるとは」
1月下旬、そんな状況が一変する。
昨シーズン、リーグ戦全34試合に出場してJリーグのベストイレブンに選ばれた高丘陽平に米MLSバンクーバーへの移籍が浮上した。開幕まであと3週間となっていたため、クラブは急ぎ補強に動かざるを得ず、アタッキングフットボールを熟知する飯倉にオファーが届くのは十分に予測できた。
飯倉は言う。
「2月に入ったら気持ちに整理をつけて、個人のトレーニングも終わりにして引退しようと決めていました。体は動くんだけど、やめなきゃいけない。周りの選手たちの引退も見てきたなかで、ああ、俺の現役生活ってこうやっていくんだなって思いましたよ。
そうしたら陽平に移籍の話が出て、自分のところに連絡が来たんです。来たって思いましたよ(笑)。でももし陽平の移籍が12月だったら、僕みたいなベテランじゃなくて若いGKに行ったとは思うんです。あのタイミングじゃなかったら、きっと自分の移籍は成立していなかった。果報は寝て待てじゃないけど、待っていたらホントに果報がやってくるとは思わなかった」
なぜそこまで復帰にこだわったのか。古巣だからという単純な理由ではなかった。
激しい反発があると思っていたが…
話は3年半前にさかのぼる。
2019年7月27日、マンチェスター・シティとの親善試合が日産スタジアムで開催された。出場機会が減っていた状況もあって、オファーのあったヴィッセル神戸への完全移籍が前日に発表されたばかりであった。
ファン、サポーターから激しい反発があるものだと勝手に思い込んでいた。
どうして? どうしてだよ?
チームバスで会場に入った際も、ウォーミングアップでピッチに出ていった際も拍手や声援が送られた。思いがけない反応に飯倉は動揺した。