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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「えっ! GKなのにドリブル?」飯倉大樹36歳は引退決断のタイミングでなぜF・マリノスに復帰したのか「こんなに俺を好きでいてくれたの?」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/04/08 11:04
3年半ぶりに古巣の横浜F・マリノスに復帰したGK飯倉大樹(36歳)。自らのGK論や移籍にいたる心情を明かした
チームのGKには開幕から2戦、ゴールマウスを守ったオビ・パウエル・オビンナ、鹿児島ユナイテッドからレンタルバックの白坂楓馬、ガンバ大阪から2月末にレンタルで獲得し、正GKを務めている一森純がいる。
20代半ばのオビ、白坂に対しては求められれば自分なりにアドバイスを送ったり、経験を伝えたりしている。だが31歳の一森に対するスタンスは違う。これは飯倉なりに考えてのことだ。
「純はこのチームに来て(F・マリノスの)やり方をアイツなりに積み上げている段階。自分の感覚で積み上げていけば、一つ山みたいなものが絶対にできるんですよ。その後でないと、求められてアドバイスを伝えたとしてもうまく活かせないことだってあると思うんです。だから今はサッカーじゃない話とかでいいんじゃないかなって」
「お前とF・マリノスは運命の糸でつながってんだな」
一緒にトレーニングしながら後輩の成長を見守っていくことは、意外にも楽しいと感じている。元々、アタッキングフットボールはアンジェ・ポステコグルー前監督がクラブにもたらしたもの。初期の「超ハイライン」で最後尾を守っていたのがほかならぬ飯倉であった。後輩GKからすれば一番の教材が隣にいるのだから、参考にならないわけがない。飯倉もその視線を感じながら、そして若いGKにも刺激を受けながら、ベンチメンバーに入れなくとも一喜一憂せず、日々のトレーニングのなかでGK道を究めんとする。
あるとき、尊敬する松永からこんな風に言われたそうだ。
「お前とF・マリノスはやっぱり運命の糸でつながってんだな」
いやいや、あなたこそというツッコミを飲みこんだうえで、自分でもそう感じている。
クラブとの糸、ファン、サポーターとの糸、チームメイトとの糸。
切れることのないぶっとい糸にする。奇跡の帰還を果たした飯倉大樹からはそんな決意が透けて見えてくる。
<後編に続く>