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大阪桐蔭戦で光った報徳学園・堀柊那の“強肩”ぶり…スカウトの評価は?「堀の涙からスタートした」監督が明かすキャプテンの成長記録 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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photograph byNanae Suzuki

posted2023/04/07 06:00

大阪桐蔭戦で光った報徳学園・堀柊那の“強肩”ぶり…スカウトの評価は?「堀の涙からスタートした」監督が明かすキャプテンの成長記録<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

主将としてチームを牽引した報徳学園・堀柊那。打撃では気負いを感じさせたが、勝ち進むにつれて存在感を示した

 大角健二(おおすみ・けんじ)監督はセンバツ決勝戦を終えた宿舎で、堀と大会を振り返った。

「堀は涙を流していました。昨夏の兵庫大会の5回戦で明石商に負けた時も、堀はものすごく泣いていて……。その涙から、このチームはスタートしましたから」

 昨年度のチームから中軸を務めていた堀は、当時2年生ながらも強肩と巧打が光り、“翌年のドラフト候補”として早くから脚光を浴びる存在だった。昨春の近畿大会で準決勝まで勝ち進んだことで、“夏の本命”に数えられていたが、夏の兵庫大会5回戦で明石商に延長戦の末に1-2で敗れている。

「延長10回に1アウト満塁のサヨナラのチャンスに自分に打席が回ってきて、結果はセカンドフライでした。あの場面が今でもすごく悔しくて……。今年になってからも、その場面を動画で見ることがあるんです」(堀)

「人前で話すことも得意じゃない」

 新チームが船出してからも、堀は敗戦のダメージを数日間引きずった。気持ちを切り替えられないまま、堀はキャプテンに就任する。チーム初の選手間投票での任命だったが、当時は少し葛藤があった。

「自分は目立つことが苦手。人前で話すことも得意じゃないんです。チームを引っ張れる自信もありませんでした」

 キャプテンとして出場した秋の公式戦でも、マスク越しの堀の表情にどこか遠慮を感じた。発言も常に一歩引き気味で、プレー以外で目につくリーダーらしい行動はあまり見受けられなかった。

 だが、このセンバツの勝ち上がりと共に、堀は変貌していった。初戦は関東大会4強入りの実力校・健大高崎(群馬)を相手に2-7と快勝。続く3回戦では昨秋の東海大会王者の東邦(愛知)との延長10回タイブレークの末に、激戦を制した。さらに準々決勝で顔を合わせたのは、昨夏の甲子園覇者で昨秋の東北大会王者の仙台育英(宮城)だった。

 実は報徳ナインは、昨夏の決勝戦を現地観戦している。同校の磯野剛徳部長が「今後への意識づけのため」と提案したことが契機となったが、まさかその7カ月後にその王者と甲子園の舞台で対戦するとは思わなかっただろう。報徳学園は東邦戦の勢いそのままに同じ延長10回タイブレークでサヨナラ勝ちを収めた。

【次ページ】 勝利を呼び込んだ盗塁阻止

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