「浮き沈みがあったというか、気持ち的にムラがあったんですけれど、この大会を通してキャッチャーとしてピッチャーを引っ張る姿、チームを引っ張る姿勢が見えました。（昨秋よりマウンドに行く頻度が増えたことは）確かに、そうですね。実際、他にマウンドに行って欲しいケースもありましたが、良いタイミングでタイムを取ってくれることも多かったですね」（大角監督）

　キャプテンの変化、そして決勝の舞台を経験したことでチームの雰囲気は変わりつつある。大角監督は続ける。

「今回、5試合とも全国レベルの学校さんと対戦させていただきました。特に大阪桐蔭や仙台育英の選手は試合後に泣いている選手もいて、本気で日本一を狙っていることをすごく感じました。そういうチームと試合をして、選手らも何かを感じていると思います」

　近くでチームを見守る報徳学園・宮崎翔コーチは、センバツ決勝の夜に見た光景を明かしてくれた。

「宿舎で夕食とミーティングが終わってから、堀をはじめ、林（純司）や山増（達也）、竹内（颯平）らがスイングをしに行っていたんです。もう夏に向けて切り替えているんだなと思いましたね」

「堀の涙からまた夏を目指す」

　大会後、堀はU18日本代表合宿に参加している。同世代の好投手の球を受けて感じることも多いだろう。この春の経験した堀が、夏までにどんなキャプテンに成長しているか期待が膨らむ。

　準優勝報告会の最後に、大角監督はこう決意表明した。

「堀の涙から始まり、センバツの決勝まで来ることができました。センバツの決勝の夜の堀の涙から、また夏を目指していきたいです」

　学校は甲子園からわずか5キロほどの場所にある。近くて遠かった舞台が、この春初めて身近になった。最後の夏は悔し涙を流さない。緑色のプライドが、今ふつふつと煮えたぎり始めた。

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