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「三笘薫や堂安律、久保建英は素晴らしいが…」杉山隆一81歳が語る“日本サッカーの未来”「ミドルパスの精度が低い」「もっと個性を磨かないと」
text by
田中耕Koh Tanaka
photograph byKoh Tanaka
posted2023/04/10 17:22
2023年1月、藤枝市でインタビューに答える杉山隆一。81歳のレジェンドの目に、現在の日本サッカー界はどう映っているのか
杉山は言う。
「海外で活躍する三笘や堂安、久保(建英)といった素晴らしい選手が出てきているのは確かだが、もっともっと突き抜けてほしい。個を伸ばすということは、自分の個性を信じて、恐れずに特徴を出すこと。指導者の教えだけに依存せず、ピッチの外でも常に『うまくなるためには、勝つためにはどうすればいい?』と自主的に考える習慣を、子どもたちが身につけられるようにすることが必要だと思う」
「メキシコ五輪の成績を早く塗り替えてほしい」
Jリーグは30周年を迎え、スポーツ界を取り巻く環境は杉山の現役時代とは大きく変わった。杉山が東京五輪とメキシコ五輪に出場した当時、W杯は別世界の祭典で、アマチュアリズムが浸透していた日本の最大の目標はオリンピックだった。報酬はなくとも、必死になってトレーニングを積み、ポジションを争った。その結果が銅メダルだった。
日本サッカー界の“最高到達点”が、銅メダルを獲得した半世紀以上前のメキシコ五輪では寂しいし、釜本を超えるストライカーが現れていないのも悲しい。年齢を重ねるにつれて、杉山は身に染みてそう感じているという。
「ペレやメッシは超えられないと思うが、個性を磨いていけば釜本や私のような選手は超えられるはず。メキシコ五輪の成績を早く塗り替えてほしいんだよ。カタールW杯ではドイツとスペインを破ったけれど、次の大会でも強豪国をしっかりと倒して目に見える結果を残さないと、本当に世界のトップレベルに近づいたとは言えないね」
考えに考え抜いて“オリジナルな自分”を確立し、新たな歴史を築いていってほしい――。伝説のウイングが後世に託したメッセージ。その願いを叶えようと、今日も日本中でキックオフの笛が吹かれている。
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