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26歳で引退、“ハードル日本王者”はなぜ絶頂期に歯科医師の道を選んだのか「次があると思っていたら、あんなに記録は伸びていない」 

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荘司結有

荘司結有Yu Shoji

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photograph byMATSUO.K/AFLO

posted2023/04/08 17:00

26歳で引退、“ハードル日本王者”はなぜ絶頂期に歯科医師の道を選んだのか「次があると思っていたら、あんなに記録は伸びていない」<Number Web> photograph by MATSUO.K/AFLO

東京五輪では110mハードル準決勝にも駒を進めた稀代のハードラー・金井大旺。その直後、なぜ潔く引退の決断ができたのか

「もう頭が真っ白になりましたね。自分でも無意識のうちにゴールに向かっていたというか……。走り終えた後に、終わってしまったんだなという気持ちになったのを覚えています」

 ゴール後にはレースへの悔しさもにじませた。翌年にはオレゴン世界選手権も控えており、リベンジという選択肢もあったはずだ。だが、金井は当初の公言通り、そのスパイクを脱いだ。悔いが残るなかでも、なぜ潔くトラックを去れたのか。

常に陸上のことしか頭にない状態で過ごしていました

「東京五輪を最終目標にして、これ以上ないくらいの練習をしていたんですよね。2020年の冬から半年間、相当な覚悟を持ってトレーニングを積んでいましたし、常に陸上のことしか頭にない状態で過ごしていましたから。陸上も含めてほとんどのスポーツは、モチベーションが9割を占めていると僕は思うんです。五輪までの半年間のモチベーションを保った練習を果たしてできるのかと考えたときに、もう無理だろうなと感じていました。それくらい『やりきった』という達成感があったんです」

 金井は男子110mHの歴史をけん引する存在だった。2018年に14年ぶりに日本記録を更新すると、各選手の台頭で目まぐるしく記録が塗り替わった。自身も2021年4月に、リオ五輪で銀メダルに相当する13秒16で、2度目の日本記録(当時)をマーク。もし金井がこの先も競技を続けていたら――。そんな想像すらもしてしまう。

次があると思っていたら、あんなに記録は伸びていなかった

 ただ、26年の競技生活に対して、本人に一切の悔いは残っていない。

「競技者として限界を感じていたわけではないんです。でも逆に次があると思っていたら、あんなに記録は伸びていなかった。東京五輪までの半年間は『この先がない』と思っているから、限界以上の練習ができたわけで。競技生活の最後を決めていたからこそ、準決勝進出という結果が残せたのだと思っています」

 旬を迎えるなかでも、常に終わりを見据えていたからこそ、限界を超える成長曲線を描くことができた。あのレースに悔しさも残るが、競技人生そのものに一切の悔いはない。だからこそ、金井は次の「歯科医師」の道へと潔く進むことができた。

〈続く〉

#2に続く
引退直後に歯科大学を受験…異色のハードラー・金井大旺27歳が語る“2度目の学生生活”「陸上特有の“刺激”を埋められるものを探している」

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