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オリンピックPRESSBACK NUMBER
引退直後に歯科大学を受験…異色のハードラー・金井大旺27歳が語る“2度目の学生生活”「陸上特有の“刺激”を埋められるものを探している」
posted2023/04/08 17:01
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by
Wataru Sato
稀代の名ハードラーは、どんなキャンパスライフを送っているのだろうか――。(全2回の2回目/#1も)
「まだ歯の勉強はほとんどなくて、生化学や生理学とか理系科目の講義が多いですね。ちょうど今はテスト期間前なので、毎朝7時に起きて授業が始まるまで勉強しています」
五輪が終わるまで編入制度の存在すら知らなかった
1月初め、ミズノ東京本社に姿を見せた金井は、試験勉強の真っ最中だった。現役時代から体型も変わらず、まだアスリートの面影が強いが、取材の一言目から歯科大生であることを感じさせた。
北海道函館市の実家は代々続く“老舗”の歯科医院。自身も自然と歯科医の道を目指すようになった。東京五輪を区切りとして現役生活に別れを告げ、約2カ月後に日本歯科大学生命歯学部の編入試験に見事合格。五輪から数週間後には、歯科大学受験へと動き出していた。
「東京五輪までの半年間は受験のことはあまり考えられなくて、どこを受けるかも決めていなかったんです。五輪が終わるまで編入制度の存在すら知らなかった。一般受験をするつもりだったのですが、ただでさえスタートが遅れている分、一年でもカットしたかったので、編入試験をやっている大学をピックアップしたんです」
東京五輪に向かう過程でも「TOEFL」の勉強
当初は高校でスパイクを脱ぎ、歯科大学に進むつもりだったが、インターハイで悔いの残る結果となり、その競技人生を延長していた。ハードラーとしてキャリアを積みながらも、金井の人生の設計図には、変わらずに「歯科医師になる」という道がはっきりと描かれていたのだ。
「僕は競技だけだと逆に不安になるというか……何かしら勉強はしなきゃと思っていましたね。2歳上の姉も歯科大に通っていて、とにかく授業が多くて大変だとは聞いていたので、机に向かう習慣だけでもつけておきたかったんです」
現役生活中も多い時には週に3回以上、机に向かう時間を作っていたという。東京五輪に向かう過程でも「TOEFL」の勉強を続けるなど、常に引退後の生活を見据えていた。日本歯科大学の編入試験は英語と小論文と面接のみ。それでも受かった時は「やっぱりホッとしました」と心境を明かすが、入学後に怒涛の勉強漬けの日々が待ち受けていた。