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「死ぬ時に後悔をゼロにするのは難しいけど…」藤浪晋太郎28歳が見たWBCと”同学年”大谷翔平の異次元「自分が語れるレベルではない」
posted2023/04/04 17:00
text by
佐井陽介(日刊スポーツ)Yosuke Sai
photograph by
Yukihito Taguchi
現在発売中のNumber1070号[渡米1年目の思い]「今はちょっと遠くても〜藤波晋太郎が見たWBC〜」より内容を一部抜粋してお届けします。<記事全文は「NumberPREMIER」にてお読みいただけます>
「すごいとしか言いようがない」
大谷翔平が吠える。グラブと帽子を夜空に放り投げる。「はるか遠い次元に行ってしまった」と評していた高校時代のライバルがついに世界一の称号を手に入れた瞬間、藤浪晋太郎は何を感じたのだろうか。
「もう……すごいとしか言いようがない。自分が語れるレベルではないですよね」
柔らかな語り口からは終始、ピュアな感動だけがこぼれ落ちた。
WBC決勝当日の朝、ひと足先に米国との“前哨戦”を終えていた。アスレチックスのキャンプ地、アリゾナ州。いつも通りクラブハウスに足を踏み入れると、この1カ月で打ち解けた仲間たちから予期せぬ「USAコール」で出迎えられた。
「みんな『USA! USA!』っていじってくるし、『日本はノーチャンス』だとか……。思わず笑っちゃいました」
だからという訳ではないだろうが、アリゾナでの滞在先のコンドミニアムで結末を見届けた10分後、声はどこか弾んでいた。
「一日本国民として純粋にうれしい。2大会連続で優勝を逃していた中で日本のレベルの高さを証明してくれたので」
「もちろん、選ばれなかった自分に悔しさはある」
前回'17年WBCでは準決勝進出メンバーの1人だった。参加できなかった今大会には嫉妬に近い感情も混在したのでは? 少しいじわるな質問には丁寧に反論した。
「もちろん、選ばれなかった自分に悔しさはある。あの雰囲気を味わってみたかった気持ちもある。絶対に熱くなれるし、楽しいでしょうから。でも今の自分は選ばれる選ばれないを語れる立場にはない。誰かと比べても仕方がないし、それよりも自分のことをしっかり……という感じですかね」
夢に突き進む人間だけが醸し出せる落ち着きが、言葉の端々からにじみ出た。