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「必要ですか? 翔平」栗山英樹監督が貫いた「信じて、信じて、信じ抜いて」の流儀…大谷翔平からは直電で参加表明「監督、WBCに出ます」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byYukihito Taguchi
posted2023/04/03 17:00
大谷翔平、ダルビッシュ有、ヌートバーなどメジャーリーガーをメンバーに招集し、WBCで侍ジャパンを3度目の世界一に導いた栗山英樹監督
'21年12月2日の監督就任会見。ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手の招集について聞かれて、栗山監督は逆にこう問いかけた。世界に勝つために必要か、必要でないか。選手選びの基準はそこだけだという逆説的な問いかけだった。そして「必要な選手がいれば誰がどこにいても交渉に行きます」と自らの手でチーム作りをする決意を語った。言葉通りに最強チームを作り上げるため、大谷はもちろん日米の候補選手の元を訪れ、直接話をして日本代表への参加意欲と可能性を聞いた。
その熱意に選手が応えた。
大谷の電話「監督、WBCに出ます」
'22年11月、栗山監督のスマホに直接、大谷が電話をしてきて「監督、WBCに出ます」と出場の意思を示した。大谷の参加表明をきっかけに、サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手やボストン・レッドソックスの吉田正尚外野手、シカゴ・カブスの鈴木誠也外野手(後に左脇腹痛で辞退)らのメジャー組が次々と出場意思を示してくれた。そしてその中にいたのが、野球の日本代表としては初めてとなる米国籍の日系二世選手、セントルイス・カージナルスのラーズ・ヌートバー外野手だった。
「アメリカでやっている選手を(日本代表に)いきなり入れるのはいいのか」と監督自身も悩んだという。代表入りを発表した直後には批判もあった。ただオンラインで複数回面談して、その明るさと前向きな姿勢、また出塁率の高さやスピードなど裏付けとなる客観的なデータも踏まえた上で、絶対に戦力になると確信を持っていた。
「あの思いきりの良さと全力プレーは切り込み隊長にぴったりだと思っていた」
大会開幕直前の3月2日の来日だったが、思った通りに明るい性格ですぐチームにも溶け込み、開幕の中国戦では「1番センター」でいきなり先発出場。すると1回の第1打席で名刺がわりの中前安打。さらに3回には中前の当たりをスライディングして捕球するファインプレーでチームに勢いをつけた。そのハッスルプレーと“ペッパーミル・パフォーマンス”は、チームが一つにまとまるアイコンにもなっていった。
村上の起用を巡って…
一方、栗山監督の「信頼」のもう一つの象徴となったのは村上宗隆内野手である。
今大会の村上の毀誉褒貶は激しかった。
2月の宮崎キャンプから打撃の状態が上がらず、強化試合6戦の打率は1割4分3厘。最後のオリックス戦では4番を外れ、6番でようやく初ホーマーを放った。勝つためには本番でも「6番」という選択肢はあったはずだが、指揮官は「やっぱりこのチームの、日本の4番はムネ」と村上の起用にこだわった。ところが1次ラウンドでは全くいいところを出せず、イタリアとの準々決勝で栗山監督が動く。好調な吉田を4番に据えて、村上は1つ下げて5番で起用した。そこから村上の復活劇が始まるのである。
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