田中将大の衝撃「スライダーが直角に…」

　駒大苫小牧との準決勝。この2年生先発と初対戦の平田は、第1打席で外角のスライダーを泳がされるように空振りし、三振した。

「おお！　これは絶対にプロにいくピッチャーのボールやなぁ」

　抑えられたのに笑みがこぼれる自分がいた。

「真っすぐが速いのもあるんですけど、一番はスライダーでしたね。バッター目線だと直角に曲がってくるんですよ。最初、外のボール球に腰が引けた時に『どうしよう』って思いましたからね」

　この試合、田中と3度対戦した平田はノーヒット、2三振。自分を苦しめたそのスライダーは、残影となって平田を惑わせた。駒大苫小牧の2番手で登板した吉岡俊輔のボールに、タイミングが合わなくなったのだ。

　そのことを印象付けるシーンが、5-6の延長10回である。2アウト二塁。一発が出れば逆転サヨナラの絶好機で打席に立った平田は、吉岡の外角スライダーに反応してしまい、ハーフスイングで三振に終わった。

「マー君のスライダーを引きずってましたね、完全に。最後は打ちにいってバットを止めたと思っても、出てましたもんね」

　怪物と呼ばれた男がそう言って、唸った。

全国大会で獲得した「6万円のお小遣い」

　ダルビッシュ、前田、田中。のちにメジャーリーグの舞台でも華々しく腕を振る好投手と対峙した平田は、甲子園に名を刻んだ。

「でも、最初からめちゃくちゃ有名ってわけじゃなかったと思うんですよね。やっぱ、夏の甲子園からだと思います。僕だけじゃなくて、辻内も152キロとか出したり。ふたりいたってのが大きかったと思います」

　05年夏。

　大阪桐蔭は初出場初優勝を遂げた91年夏以来の甲子園ベスト4と、新たな足跡を残した。そして、08年夏優勝、12年春夏連覇と、名門としての地位を確立していく。

　平田たちの世代が集まると、決まって誰かがこう切り出し、盛り上がるという。

「今の桐蔭があるのは、俺らがいたからやんな。俺らから桐蔭、有名になったよな」

　その中心にいたのが、明治神宮大会と甲子園の全国大会で、総額6万円の小遣いを獲得した平田だった。

＜前編からつづく＞

#1から読む

「だからみんな桐蔭を選ぶ」大阪桐蔭OB・平田良介が明かす“西谷監督の素顔”「ナゾの言葉『どぅい』を持ってるんです」…その意味とは

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。