自身が初めてベンチ入りした03年夏に後塵を拝し、04年センバツ後の春季大会では雪辱を果たしたが、夏の決勝でまた敗れた。延長15回で引き分けた翌日の再試合で登板し、完投された相手が当時1年生の前田健太だった。大きな弧を描くように落ちるカーブとストレートのコンビネーションは、「桑田真澄二世」の名に恥じないもので、大阪桐蔭はこの試合で7点を奪ったものの、1年生ピッチャーにとどめを刺せなかった。

PL学園1年時の前田健太（2004年）　©JIJI PRESS

「プールでも行くか？」なかば諦めていたマエケン攻略

　その前田が2年生エースとなっていた05年夏。平田は半分、甲子園を諦めていた。

　こんなエピソードがある。

　大阪大会の組み合わせ抽選を託された2年生部員が、半泣きで戻ってきた。「どうしたん？」。平田たちが問いただすと、「ベスト8でPLと当たります」と報告され、すみません、すみませんと、何度も頭を下げられた。

　3年生たちがカレンダーを見やる。

「ここでプールにでも行くか？」

　平田が当時の情景を思い出し、笑う。

「半分冗談ですけど、それだけPLは強かったってことです。勝てたのはまぐれですよ。マエケンに申し訳ないですけどね」

　そう平田が含みを持たせた、PL学園との準々決勝。0-1の6回表にエースの辻内のストレートがバッター・前田の右ひじに当たったことが影響したのか、その裏に平田が甘いボールを捉えて逆転2ランを放ったのである。運命のいたずらが交錯したとはいえ、引退後のプールがちらついていた大阪桐蔭は、この試合で甲子園を現実的に捉えられたという。

　そして平田は、甲子園で爆発した。

2005年の夏、甲子園にその名を轟かせた平田良介　©BUNGEISHUNJU

　2回戦の藤代戦で放ったホームランも豪快だったが、これはいわば序章、あいさつ代わりだった。平田にとってのメインイベントは準々決勝の東北戦だ。第1打席から2打席連発。第3打席のライトフェンスの防球ネット直撃のツーベースを挟んだ第4打席は、バックスクリーン右に叩きこんだ。1984年に清原が記録して以来の1試合3発だった。

　ホームランバッターだと思っていない自分の感覚とは裏腹に、夏の甲子園で「怪物」の称号を与えられた。その平田が「一番びっくりした」ピッチャーこそ、田中だった。

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