プロ野球PRESSBACK NUMBER
昨年最下位の中日はなぜ侍ジャパンを苦しめた? 大野雄、小笠原、柳…最強投手陣をぶつけた立浪監督の真意とは 大谷翔平の衝撃体験に選手は口あんぐり
text by
渋谷真Makoto Shibutani
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2023/03/07 11:04
ドアラ(右)のハイタッチを華麗にスルーする大谷翔平
大谷がベンチで見守った(正式にベンチ入りはできない)試合では、佐々木朗希が国内日本人選手最速タイの165kmをマーク。並ばれた投手こそが日本ハム時代の大谷だった。3日の3万5833人に続き、4日は3万5897人。チケットは早々にソールドアウトとなっていたが、球場に隣接する駐車場内の特設グッズ売り場にも3000〜4000人の入場待ちが発生するなど、名古屋の街は侍フィーバーに沸いていた。
小笠原、柳、大野雄…最強投手陣を並べて
しかし、ただの祭りではない。侍ジャパンにとっては本番を控えた重要な実戦。中日にとっても全国に名を売るまたとない機会だった。立浪和義監督は3日に小笠原慎之介、4日は大野雄大を先発に指名。さらに涌井秀章は移籍後初、仲地礼亜は入団後初めて本拠地のマウンドに上がった。2年前の防御率、最多奪三振の2冠に輝いた柳裕也も含め、一軍ローテーションをズラリと並べたことが侍ジャパンへの敬意だった。
「まずはめちゃくちゃ緊張したマウンドでした。そして反骨心というと変な言い方ですが、あのユニホームを着た選手たちに投げる機会なんてこの先の野球人生であるかどうかわからない。普段からでかいと思う村上選手が、2倍くらいに見えた。シーズンに入っても対戦する打者なんですが、そういう意味でも反骨心。楽しんで投げることができました」
こう話した小笠原は5イニングを1点に抑え、試合後には立浪監督から「開幕投手」の辞令を正式に受け取った。世界一を奪還したプレミア12(2019年)、悲願の金メダルを獲得した東京五輪(21年)では侍ジャパンの一員だった大野も、この試合の特別なモチベーションを説明した。
「僕と慎之介(小笠原)は、この試合の開催が決まった時に立浪監督に『投げたいです』って願い出ているんです。名古屋で侍ジャパンの試合があるなんて、めったにない。この試合に投げることがひとつの目標でしたし、投げる以上はしっかりしたピッチングをしないといけない」
強い要望を首脳陣に伝え、実現したマウンドだった。2人に共通したのは「配球も含めてシーズンと同じ」という全力投球だった。試合の名目は「壮行」だが、打たれることが「壮行」ではない。3月開催に合わせて懸命に、急ピッチで調整する侍たちをリスペクトするからこそ、一線級の球を見せたかったのだ。