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昨年最下位の中日はなぜ侍ジャパンを苦しめた? 大野雄、小笠原、柳…最強投手陣をぶつけた立浪監督の真意とは 大谷翔平の衝撃体験に選手は口あんぐり
posted2023/03/07 11:04
text by
渋谷真Makoto Shibutani
photograph by
SANKEI SHIMBUN
人間は予測を超える現実を目の当たりにした時、本当に目を見開き、口が閉じないのだと知った。中日の公式YouTubeが公開した動画を見た方は多いと思う。3月4日の侍ジャパンとの壮行試合(バンテリンドーム)の試合前に、大谷翔平が打撃練習を行った。本来ならロッカールームで休息中のはずの選手たちが一塁ベンチに並び、スマホで撮影したり放心状態で見つめたりする様子が映し出されていた。
中日の選手だけではない。侍ジャパンの仲間たちでさえ、打撃ケージ真後ろの特等席に整列。まるで大輪の花火を見上げる浴衣女子のように、うっとりとした表情を浮かべていた。WBCの大会規定により試合出場ができないことはわかっていた。二刀流の大谷は練習での体力消耗を極力避けるため、屋外での打撃練習をほとんどやらないことでも知られている。それでも姿だけでも目に焼き付けたいと、開始3時間前の開門と同時にたくさんのファンが場内になだれ込んだ。期待通りの「ショータイム」。27スイングで9本をスタンドに放り込み、うち3本は5階席まで飛んでいった。
試合はもちろん、打撃練習でも5階席まで飛ばす選手は、少なくとも2011年の統一球導入後はいなかったはずだ。トラッキングシステムによる打球の初速はMAXで190km。村上宗隆でも170km前後だから、規格外の打球速度なのは間違いない。角度さえつけば、規格外の飛距離を生み出すという納得の理屈である。