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甲子園の風BACK NUMBER
今永昇太の高校恩師が明かす、お調子者の左腕が“投げる哲学者”になるまで「1年時はノートを忘れていた」「一度だけ、私がサインを出すと…」
text by
内田勝治Katsuharu Uchida
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/03/01 11:01
年齢ではダルビッシュを除くと投手陣最年長となる今永。若い投手たちから相談を受けることも多い「投げる哲学者」の原点に迫った
「2回サヨナラ勝ちした時のバッターが今永だったというのが強く印象に残っています。サヨナラスクイズとサヨナラヒットです。バッティングはよくはなかったですけど、当時からいろいろ考えながらやっていました」
3年春の福岡北部大会1回戦の折尾愛真戦で14三振を奪い、プロのスカウトからも注目され始めた。そして、名実ともにエースとして迎えた最後の夏。今永は3回戦の北九州市立戦で完封勝利を挙げ、チームの17年ぶり県大会進出に貢献。3試合で25イニングを投げ、わずか1失点と抜群の安定感を誇った。
1回から9回まで140キロ台が出ていましたね
そして4回戦。久留米市野球場で小倉と対戦した。
久留米市野球場は電光掲示板に球速が表示される。今永はこの試合で、高校時代最速となる144キロを計測している。
井上さんが振り返る。
「1回から9回まで140キロ台が出ていましたね。その時『こいつ凄いな』って思いました(笑)」
ただ、球速で圧倒しても、試合に勝てるとは限らない。初回に1点を先制したが、4回に同点、6回にはスクイズで勝ち越され、1-2で逆転負け。甲子園は遠かったが、高校野球に悔いはなかった。
「今永は涙を流すとかいう選手でもなく、負けた時はもう次に向かっている感じがしました」(井上さん)
北筑にはプロを目指して入ってきていない。大学に…
あるプロのスカウトからは「直球だけなら今すぐプロで通用します」と下位での指名を約束されたが、井上さんと田中さんは「北筑にはプロを目指して入ってきていない。大学に行った方がいい」という意見で一致。両親と本人も納得し、関東の大学からプロ入りすることを目標に、東都大学リーグの名門・駒沢大学への進学を決断した。