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甲子園の風BACK NUMBER
今永昇太の高校恩師が明かす、お調子者の左腕が“投げる哲学者”になるまで「1年時はノートを忘れていた」「一度だけ、私がサインを出すと…」
text by
内田勝治Katsuharu Uchida
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/03/01 11:01
年齢ではダルビッシュを除くと投手陣最年長となる今永。若い投手たちから相談を受けることも多い「投げる哲学者」の原点に迫った
全国から猛者が集う駒沢大学で1年春から登板を果たすと、2年生からエースを任されるようになる。そして3年秋には7勝を挙げ、チームの26季ぶり優勝に貢献。明治神宮大会も制し、日本一に輝いた。4年時は左肩痛に苦しみ、未勝利に終わったが、リーグ通算18勝を挙げ、2015年のドラフト1位で横浜DeNAベイスターズに入団した。
これまで緊張したのは一度だけ
北筑出身初のプロ野球選手となった左腕は、今や「ハマのエース」として君臨し、侍ジャパンの一員として世界一を決めるWBCの舞台に上がるまでに成長を遂げた。
WBCでは先発にリリーフに、大車輪の活躍が期待される。重圧のかかる場面で登板することも少なからずあるだろう。それでも、田中さんは「普段通りやれば多分大丈夫」と心配はしていない。
「彼は高校時代から『緊張しない』って言うんですよ。これまで緊張したのは一度だけ、大学1年の春に初めて神宮球場のマウンドに立った時だけだと言っていました」
今永が唯一「緊張した」と語った2012年5月16日の日本大学戦。3-2と1点リードの8回裏2死一、二塁と緊迫した場面で大学デビューのマウンドに上がった。先頭打者に死球を与えてしまい、2死満塁と一打逆転の場面。並の1年生ならそのままズルズルと崩れてもおかしくはないが、今永は違った。三振でピンチを脱すると、9回裏も3者三振。好リリーフで勝ち点を奪い、チームの1部残留を決めてみせた。
緊張したっていうのに4奪三振なんですよ(笑)
「緊張したっていうのに4奪三振なんですよ(笑)。緊張しても力が出せるタイプだし、投げている時は『勝ったらヒーローインタビューで何て答えようかな』とか考えていると思います。だからWBCでも普段通りできるんじゃないでしょうかね」
2017年11月、日本代表デビューとなったアジアチャンピオンシップの台湾戦で6回を3安打無失点、12奪三振と好投。2019年11月のプレミア12でも2試合に先発して9イニングをわずか1失点と、国際大会で無類の「勝負強さ」を誇ってきた。