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家族旅行で「練習着を持っていけ」箱根駅伝を目指した帝京大・中野大地が語る「親子が“監督と選手”になった日」…最後に父は、息子をこう労った
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2023/02/27 11:03
父が監督を務める帝京大学で箱根駅伝を目指した中野大地。今後はコモディイイダで競技を続けていく
走れなかった箱根駅伝
その取り組みに好感触を得て、いよいよ夏合宿を迎えようという時だった。7月後半に新型コロナウイルスに感染してしまう。復帰後、今度はその遅れを取り戻そうと、誰よりも走り込んだ。その負荷が大きかったのだろう。今度は大腿骨を疲労骨折し、完全に戦線を離脱した。
リハビリや補強に力を注ぎ、最後まで箱根を諦めるつもりはなかったが、治るまでに時間を要し、結局、最後の箱根も走ることが叶わなかった。
「これが僕の4年間の結果だったっていうこと。僕は大学4年間で箱根駅伝っていう華やかな大会を目指すことに価値を見出していたので、箱根駅伝には選手として縁がなかった、って考えるようにしています。悔しいですけど。
僕は、この4年間“もっと頑張ればよかった”って思う日は1日もありません。ただ、その頑張る“ベクトル”を間違えていて、反省するべきところはたくさんあります。でも、後悔は微塵もありません」
中野がこうきっぱりと言い切る。思い描いたフィナーレを迎えることはできなかったが、実業団のコモディイイダで競技を続ける中野にとって、帝京大での4年間は決して無駄にはならないはずだ。
父親の本音「よく辛抱したと思う。褒めてあげたいな」
そして、監督もまた中野の努力をちゃんと見ていた。
「本当に手を抜かない選手で、強くなりたいっていう気持ちを前面に出していた。4年間、故障も多かったけど、結果が出なくても腐らず、よく辛抱したと思う。褒めてあげたいなって思いますよね。
親の立場としては、本当に息子を誇りに思います。そこは、バカ親に思われるかもしれませんが(笑)」
思わずこぼれ出たのは、父親として息子を思う本音だった。
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