猛牛のささやきBACK NUMBER
プロ5年で引退→スカウト転身の24歳が1年目から“超いい仕事”…左腕・曽谷龍平を一本釣り「お兄さんみたい」と信頼される理由とは?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2023/02/14 11:02
オリックス岡崎スカウトが担当したドラフト1位・曽谷龍平投手。8歳の頃に書いた作文も話題になった
8月31日に行われた高校日本代表対大学日本代表の壮行試合では、9回表に登板。注目度の高い試合でも自慢の速球で押して無失点に抑え、セーブを挙げた。
「もう文句ねーだろ、1位で行ってくれよー!って感じでしたね」と岡崎は笑う。
だがはやる気持ちを抑え、曽谷への調査書は、12球団の一番最後に持っていった。牧田からのアドバイスだった。
「12球団から(調査書が)来るのはわかっていましたから。牧田さんに『いつ持っていきますか?』と相談したら、『最後に持っていけば?』って言われて。長年いろんな縁を作ってきた牧田さんのアドバイスだったので、これは言う通りにしてみようかなと。それで大学側に、11球団が持ってきたら教えてほしいとお願いして、最後に行きました。
そこで話をして、人間性はもちろんいいし、関西人気質なところもあった。その時に本人からもオリックスに行きたいという思いを感じました。たぶん行きたい球団が最後に来たからだと思うんですけど、ちょっと“俺はできるやつだぜオーラ”を出そうとしていましたね(笑)。少し気取っていたというか」
曽谷の1位指名を公表「マジっすかー!」
それから10日ほど経った10月14日、オリックスは曽谷の1位指名を公表した。牧田はこう明かす。
「すべて確率だと思っているので、確率をどう上げるかだけを考えています。そこは永遠のテーマで、まだ勉強中というか、試行錯誤しながらデータを出している途中です。そういう中で近年、(その選手に対して)一番最初に指名を公表した球団が、抽選になっても当てていた。その不思議な確率を覚えていたので。もちろん一番に公表したから必ず当たるというわけじゃないんですけど。
彼は関西出身の選手で、うちを熱望してくれていて、うちもすごく評価をしていて、補強ポイントにもマッチした。いくつものポイントをクリアしたからこそ公表につながったわけです。山崎颯一郎が先発から中継ぎに移って、本田仁海も中継ぎとしてすごいパフォーマンスを発揮してくれていた。一方で(昨季ドラフト1位の)椋木(蓮)が手術になった。そう考えると、やっぱり一番必要なのは先発かなという話し合いになりました。じゃあアマチュア界でトップで、オリックスという球団に色的に合いそうなピッチャーは? となった時に、やっぱり曽谷でしたね」
1位指名公表の前日、岡崎は牧田から連絡を受け、嬉しさのあまり「マジっすかー!ありがとうございます!」と叫んだ。