猛牛のささやきBACK NUMBER
プロ5年で引退→スカウト転身の24歳が1年目から“超いい仕事”…左腕・曽谷龍平を一本釣り「お兄さんみたい」と信頼される理由とは?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2023/02/14 11:02
オリックス岡崎スカウトが担当したドラフト1位・曽谷龍平投手。8歳の頃に書いた作文も話題になった
岡崎は2017年に花咲徳栄高校からドラフト3位でオリックスに入団した。その年の4位は、今や日本のエースとなった山本由伸だ。
岡崎は高卒1年目から一軍で5試合に出場しプロ初安打も記録した。だが2年目以降一軍出場のチャンスはなく、育成契約も経験したのち、5年目に引退。スカウトに転身した。
その時、岡崎の高校時代の担当スカウトで、今は上司となった牧田勝吾編成部副部長にこう言われた。
「“いい選手”じゃなく、大輔が“惚れた選手”を教えてくれ」
岡崎が、スカウトとして初めて惚れた選手が、白鴎大の曽谷龍平だった。
もちろん曽谷は岡崎がスカウトになる以前から注目されていた選手だ。北関東が岡崎の担当エリアに決まった時、牧田に「白鴎大の曽谷はちゃんと見ておけよ」と言われていた。
昨年2月、岡崎は白鴎大のグラウンドで行われたオープン戦で、初めて曽谷のピッチングを見た。
「その時はたぶん調子があまりよくなかったと思うんですけど、左であれだけの身長があって、強い真っすぐを投げられる。いい左ピッチャーだな、球速いな、すごく楽しみだな、と思いました」と振り返る。
その時はまだ“いい選手”だった。
岡崎スカウトが曽谷に“惚れた”瞬間
衝撃を受けたのは、関甲新学生野球連盟春季リーグ初戦の4月9日、作新学院大戦。岡崎が初めて視察した曽谷の公式戦だ。
「それまで見た中で、イッチバンいいピッチングだったんですよ。『うーわ!いい!こんなことできんの!』って」
惚れた瞬間だった。
「あんなにオープン戦はぐちゃぐちゃだったのに、公式戦1発目にバッチーン!と合わせてこられるんだ、と驚きました。球速もコントロールも何もかも違った。うわ、本番に強いピッチャーなんだって。この試合絶対大事だぞ、ここで絶対三振取らなきゃいけないぞ、という時にすごい集中力を発揮する。左で150キロを投げる投手はプロでも少ないですしね。本当にあの時ですね。僕が『マジで欲しいなー!』って思ったのは。本当に惚れた選手でした」
それから足しげく通い、スカウト会議では臆することなく曽谷を推した。白鴎大の藤倉多祐監督(当時)からは、曽谷が子供の頃からのオリックスファンだということも耳にしていた。