「その選択は僕のパフォーマンスが原因ではなく、あくまで戦術的な理由によるものだと、監督に言われたよ」とティアニーは明かす。「そして冨安は素晴らしいパフォーマンスを披露し、監督のゲームプランはうまくいったのだから、僕に言うことはない。あの状況であの選択をする指揮官は多くないと思うけど、うちのボスはさすがだね」

　そのリバプール戦で、冨安はモハメド・サラーと対峙した。そのエジプト代表アタッカーの最大の武器は、内に切れ込んでからのシュートだが、右利きの冨安はこれにうまく対応。また向かって左側をオーバーラップしてくるトレント・アレクサンダー・アーノルドにも、あまり仕事をさせなかった。冨安はアーセナルの3-2の勝利に寄与し、以降のリーグ戦3試合でもレフトバックで先発している。

昨年10月のリバプール戦。冨安は左SBで先発しモハメド・サラーに仕事をさせなかった　©Getty Images

アルテタ監督も「本当に助かっているよ」

　アーセナルはその4試合を3勝1分で終えたものの、ジンチェンコが復帰すると、冨安はベンチに戻った（ヨーロッパリーグでは主にライトバックとしてグループステージの全6試合に出場、先発は4試合）。しかしアルテタ監督は彼の能力、特に汎用性の高さを称えている。

「トミは日本代表で左のセンターバックでプレーしている。私もその姿を何度か観たが、素晴らしい出来だった。彼は両足を遜色なく使えるので、レフトバックも高いレベルでこなす。これほど多くのオプションをもたらしてくれる選手がいて、本当に助かっているよ」

　アーセナルの最終ライン中央では、ウィリアム・サリバとガブリエウが堅城を築いているが、もしどちらかが離脱することになったら、指揮官はどんな選択をするだろうか。冨安をそのまま代役に立てるのか、それともホワイトを中央にずらして冨安を右に置くのか。もっとも1月に期待のセンターバック、ヤクブ・キウィアーを獲得して中央の人材には事欠かなくなっているので、冨安は左右のサイドバックの戦力と捉えられている可能性が高い。

　レフトバックで先発した10月の4試合の後、リーグ戦で冨安に先発の機会は訪れていない。かといって、彼がホワイトに劣っているわけではない。リーグ戦のここまでのパス成功率は、ホワイトが84.0%、冨安が83.1%。その中身を見ると、ホワイトはショートパスの数値がやや高く、冨安はロングボールのそれが少し上回っている。またホワイトは平均ブロック数で勝るものの、冨安は平均タックル数が多い。

アーセナルOBが絶賛「1対1の強さはチーム1」

　かつてアーセナルの最終ラインを支えた元イングランド代表DFマーティン・キーオンは、冨安の大ファンだ。彼は日本からやってきた後進を、次のように評して目を細める。

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