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なぜ「守護神ダルビッシュ」は誕生した? 「藤川球児には謝った」山田久志がノートを真っ黒にして考えた世界一の継投術〈WBC連覇のウラ話〉
text by
永谷脩Osamu Nagatani
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/02/20 17:23
かつて“継投の魔術師”と呼ばれた山田久志コーチが、WBCにおいて最も重んじたのが“投手陣の輪”だった。守護神ダルビッシュ誕生の裏にあったドラマとは?
「投手って、先発をずっとやっていて、抑えって言われると降格を言われたんだと思うものなんだ。だから、きちんと説明しようとしたら返ってきた答えは『山田さん、今後のためにシンカーの投げ方教えてください』だったんだ。面白いやつや」
ダルビッシュの「抑え」としての起用は、その日のうちに伝えられた。藤川はこれにある程度納得して、ダルビッシュにリリーフを託した。
「球児がリリーフの心得をダルビッシュに教えてくれたんだってね。やはり、チームとして戦う形が出来上がってきたからこそ、日の丸のために一つになってくれたんだよ。いい投手陣だった」
球数制限、登板間隔制限という難しい条件の中“継投の魔術師”と言われた投手交代を見事にこなし優勝が決まった時、あらゆる場面を想定し、調整してきた岩隈と杉内に「ありがとう」と声をかけ、登板機会のほとんどなかったストッパーの藤川に対しては「すまなかった」と声をかけた。
そんな山田は決勝戦前、練習から引き上げる際、さりげなくVサインを出した。そして「これが山田の最後のユニホーム姿になるから」と本気とも冗談ともとれる一言をつぶやいたのが印象的だった。
★初出:Number726号(2009年4月2日発売)『山田久志「投手コーチが見せた魔術」』
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